研究課題
近年の^<31>P-核磁気共鳴(NMR)による解析から、一般的に活性型と考えられてきたGTP結合型Rasには、エフェクターとの結合に有利なstate2とエフェクターとの結合に不利なstate1が相互変換(遷移)可能な状態で存在することが明らかとなっている。これはRasファミリー低分子量GTPase全般に見られる普遍的な性質であり、2種類のstateの占有比率は各GTPase間で大きく異なることが分かっているが、state遷移のメカニズムについては全く解明されていない。その原因として、H-Rasではstate1構造が、M-Rasではstate2構造が不明であるように、1種類のポリペプチドから2種類のstate構造が決定されたRasファミリー低分子量GTPaseが存在しないことが挙げられる。本研究では、H-Ras型アミノ酸置換を導入したM-Ras変異体、M-RasD41Eを作成し、1種類のRasポリペプチドに由来する2種類のstate構造の決定に成功した。詳細な分子内相互作用の解析の結果、state1構造では、switchI領域のN末端近傍のアミノ酸残基間での水素結合、並びに、switchII領域とα3ヘリックスの間の水素結合の多くが欠失していた。一方、state2構造ではこれら2種類の分子内相互作用により、2つのswitch領域とGTPの間の水素結合の形成が促進され、立体構造の安定性が保たれていた。以上の結果から、前述の分子内相互作用に起因する2つのswitch領域とGTPの間の水素結合がstate2構造の安定化、並びに、state2の占有比率の増加を引き起こすことが明らかになった。
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The Journal of Biological Chemistry
巻: 285巻・29号 ページ: 22696-22705
巻: 印刷中
http://www.med.kobe-u.ac.jp/molbiol/index.html