研究課題/領域番号 |
10J00698
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸藤 竜之介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | X線検出器 / SOI CMOS / 撮像分光 / 銀河系中心 / ブラックホール / 分子雲 |
研究概要 |
[SOIPIXの開発と性能評価] 今後のX線天文学における熱的と非熱的宇宙高エネルギー現象(例えば、銀河中心)の研究を開拓するために「高速読出・低バックグラウンド・精密分光撮像・広帯域のX線検出器」が必須である。その実現に向けて、SOI(Silicon-On-Insulator)技術を応用した日本独自のアナログ・デジタルLSIと厚いX線検出部の一体型ピクセルSOI検出器「X線SOIPIX」の開発を進めた。昨年度初代機(XRPIX1)の開発に成功し、硬X線による性能評価を行った。今年度(平成23)は、昨年の結果から問題点と改善点などを明確化し、さらなる性能向上に向けて改良品(XRPIX1b)を製作した。次のように新しい成果を上げることができた。具体的には、(1)センサー部のレイアウトを改良することより出力ゲインを1.8倍向上させた。(2)軟X線による表面および裏面の照射試験において、アルミニウムの特性X線の検出に成功した。エネルギー分解能が180eV@1.5keV(表面照射)に向上した。(3)高比抵抗のシリコンウェハーを導入することで、センサー部の空乏層厚が260um(完全空乏)に達した。(4)回路クロストークの測定を行い、高性能(信号干渉比<0.5%)であることを実証した。(5)X線トリガーの検出およびスペクトルの取得に成功した(同種検出器では初)。(6)SOIXPI専用のアナログ・デジタルコンバータを開発し、機能実証に成功した。これらの成果を国際会議(IEEE)で発表し、大きく注目を集めた。さらに、アメリカ(MIT)に二ヶ月滞在し、共同で新素子の評価実験を行った。X線SOIPIXが同分野における国際競争の舞台に立つレベルに到達したと実感した。来年度も実用化を視野に入れて、試作品の開発、改良、試験を全力で進めて行く。 [銀河中心のX線観測とデータ] 今年度は銀河中心射手座C領域の観測データを解析し、以下の成果を挙げた。(1)新しいX線反射星雲を発見した。 (2)複数のX線反射星雲の時間変動を定量調査した。(3)複数のX線反射星雲の三次元分布を測定した。 (4)これら(1-3)結果より、中心巨大ブラックホールの過去における活動性を初めて定量調査した。 「すざく」衛星国際会議(stanford)に参加し、発表と情報収集を行った。来年度はさらに詳しい解析を進め、結果を論文にまとめる予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線SOIPIXの開発において、軟X線の検出、X線トリガー・スペクトルの取得、新型アナログ・デジタルコンバータの開発は、成功に至るまで、予定より試行錯誤の回数が少なかった。これは、合理的かつ計画的に実験などを進めた結果を考える。
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今後の研究の推進方策 |
X線SOIPIXの開発について、これまでの結果と経験を生かして、新しい大型素子(XRPIX2、これまでの25倍のサイズ)の開発を進める。来年度の春に完成予定。XRPIX2の評価試験と改良を行い、さらなる性能向上を目指す。また、実用化を視野にいれた実験も行う。 銀河系中心のX線観測について、射手座C領域のデータ解析をさらに詳しく行い、他の領域の結果もあわせて、巨大ブラックホールの過去における活動性を明らかにする。
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