研究課題
本研究では、濡れ性の制御可能な薄膜材料の開発を目的とし、シリカ球状粒子を利用した薄膜材料表面への微細構造の構築とその薄膜上でのポリマー合成による表面改質を行った。シリカ球状粒子はストーバー法を用いて調製し、平均粒子径80nmおよび150nmの均一な粒子の作製に成功した。同球状粒子にポリマーの重合触媒であるCr酸化物種を含浸担持した後、スピンコート法により薄膜化した。SEM観察の結果、自己組織化現象によりシリカ球状粒子が三次元的に配列することで、表面に緻密な凹凸構造が形成していることが確認された。その後、薄膜上でのエチレンの光重合反応によるポリエチレン被覆を行った。ポリエチレン被覆後の薄膜の濡れ性を評価したところ、薄膜表面が疎水的に改質されていることが明らかとなった。また、シリカ球状粒子の粒子径の違いにより疎水性の向上効果に違いが現れ、小さな粒子を用いるほど高い疎水性が得られることがわかった。平均粒子径80nmのシリカ球状粒子の粒子を用いて作製した薄膜は水滴接触角162゜の超撥水性を示した。以上、本研究では、シリカ球状粒子を利用した表面微細構造の形成、およびその薄膜上でのポリエチレン合成による超撥水性表面の創製に成功した。また、シリカ球状粒子のサイズが濡れ性に与える影響を明らかにした。このような超撥水性材料は防曇材料やセルフクリーニング材料に利用可能であり、我々の生活に密着した応用が期待される意義深い成果であると言える。また今後、ポリエチレンの代わりに刺激応答性ポリマーを合成することにより、最終的な目標としている表面濡れ性の制御可能な薄膜材料の創製が達成されるものと期待される。
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