研究概要 |
6月下旬に開催された第16回国際仏教学会学術大会(台湾・法鼓山僧伽大学)にて,前年度に提出した博士論文の主要な成果の一部である,『阿闍世王経』の編纂過程に関する口頭発表を行った.これによって,研究代表者のこれまでの主要な研究成果について国外の仏教研究者と共有することができ,さらに,彼らとも貴重な意見交換をすることができた.また,他の参加者の発表やパネルを聴くことで,海外研究者の最新の研究動向を知るとともに,彼らと交流を持つことができた. 9月下旬からはアメリカ合衆国・スタンフォード大学に滞在し,宗教研究部門に在籍するPaul Hrrison教授のもと,在外研究を開始した.同教授はチベット・カンギュル研究や支婁迦識訳などの古漢訳経典の研究に関して国際的に令名高く,『阿闍世王経』サンスクリット語断片の出版も手がけておられる.そのHarrison教授のもとで研究代表者が研究に従事することは現在の研究課題を遂行することに資するところが非常に大きい.その具体的な成果としては,Winter Quarter前にはHarrison教授と校訂方法などを相談の上,試みに『阿闍世王経』第VI章のチベット語訳校訂テキストおよび諸訳対照テキストを作成した.Winter QuarterにはHarrison教授のゼミにおいて,『阿闍世王経』第V章の漢訳テキストを大学院生とともに講読する機会を得,研究代表者はそのゼミで用いる資料となる諸訳対照テキストを準備した.ゼミでの講読成果をフィードバックすることで大きな恩恵を被ることができた. また,Autumn Quarterには,同じく宗教研究部門の他教官のゼミにも参加し,道元著『正法眼蔵』「山水経」を購読する機会を得た.さらに,スタンフォード大学滞在開始以来,宗教研究部門で開かれる講演やワークショップに積極的に参加し,アメリカもしくは諸外国の研究者とも交流を持つ機会に恵まれた.また,ときに,カリフォルニア州立大学バークレー校で開かれる講演やシンポジウムにも足を運んだりもした. なお,今年度(平成23年度)半ばより博士論文の一部,第1部「研究篇」について出版準備を開始した.平成24年度中の出版を目指して作業を進めている.(Harrison教授には報告書への記載について了解を得ている.)
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今後の研究の推進方策 |
次年度も『阿闍世王経』のテキスト研究と他典籍との関連を探る研究の双方を推進するが,後者については,平成23年度に実施できなかった般若経典類との関連について調査を進めることにしたい。また,博士論文の出版準備も引き続き進め,次年度中の出版を目指す.
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