研究課題/領域番号 |
10J00758
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
岩崎 慎平 総合地球環境学研究所, 研究部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 汽水湖 / コモンズ / 流域環境ガバナンス / 資源管理 / インド:タイ:日本 / 共同漁業管理 / 共同体 / 湖口管理 |
研究概要 |
本研究は汽水湖およびその集水域をフィールドに、人々の生活条件を規定する「資源(水産資源)」に着目し、汽水湖漁業の持続可能性をめぐる資源管理と流域環境ガバナンスのあり方について検討することを主眼とする。本年度は、3つの汽水湖において、1.利害関係者間で水産資源の利用と管理をめぐる資源配分メカニズムの動態把握、2.そのメカニズムが当該漁村社会に暮らす人々の生計に及ぼす影響評価、3.流域の土地利用変化に伴う漁業関係者の動向について、以下の調査研究を実施した。 インド・チリカ湖では政府が漁業管理の中核として推進する、漁協の再生に向けた共同販売事業を事例とし、同事業活動の影響評価、そして同地域の人口・就業構造と漁家生計に関する悉皆調査を実施した。結果、同事業は漁家生計の改善を促し、漁協の結束力を高める働きをしていた。また年代毎に漁業人口の増加率と商業漁業の移行過程を分析し、現行の漁業管理問題の実相を定量的に評価した。 サロマ湖では「森と海は一つ」を合言葉に展開する植樹活動に着目し、漁業者に同活動の意識調査を実施した。結果、漁業者は植樹活動を流域の環境保全に加えて関係者間の親睦を深める機会として意義を見出し、同活動が漁業管理を担う共同体の結束力を高める触媒として機能していた。 タイ・ソンクラ湖では、漁業者と水産局がそれぞれの権限と役割を認識して取り組む共同漁業管理に着目し、その現状について小型定置網漁を事例に検討した。結果、水産局は人員や予算規模の限界を認識し、規制的手法から対話を重視した漁業者との協働に基づく資源管理体制へと移行しつつあるが、漁業者同士で定めたインフォーマルな制度的取り決めに関する配慮がなかったため、小型定置網の取り締まりが機能せず、湖内に同網が多数設置されていることを実証した。 今後は各調査地から得られた研究結果を比較分析し、汽水湖漁業の持続可能性について検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は年次計画どおりに調査をおこない、既に一部の研究成果は国内・国際雑誌に掲載され、一定の評価を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
各調査地から得られた研究結果を比較分析し、各地域の共時性に留意しながら、1.汽水湖漁業にみるコモンズ生成条件の内部性と外部性の抽出、(2)流域環境ガバナンスの阻害・促進要因の特定を一般化し、汽永湖漁業の持続可能性、さらには漁村コミュニティの自立的発展に向けた包括的な枠組みを提案する。
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