研究概要 |
本研究では,生物の筋が外力に対する粘弾性特性を変化させられることに着目し,制御によって出力の粘弾性を変化できるリニア電磁アクチュエータを複数搭載したロボットを用いて,人や物と物理的インタラクションが可能なシステムを実現する.このシステムによって,人との接触を伴うタスクにおける安全性向上や,複雑な環境において歩行や跳躍動作の実現が可能となる.本年度は,平成22年度に開発したリニア電磁アクチュエータを一関節および二関節筋として用いた筋骨格一脚ロボットによる連続跳躍を実現した.このロボットはアクチュエータの出力の弾性係数を変化させることにより,一脚ロボットの脚先の剛性特性(楕円で表すことができ,その楕円は剛性楕円と呼ばれる)を容易に調整可能である,着地時の脚先に対する重心の位置に応じて剛性楕円の長軸の傾きを変化させることで,重心位置を調整し転倒せずに再び跳躍を行うためのフィードバック制御を提案した.シミュレーションおよび実機実験で,本フィードバック制御により,連続跳躍が実現できることを示した.また,外力の変化が複雑で長時間のインタラクションが必要となる様々な作業を行う腕に着目し,手先剛性楕円の調整による柔軟な物理的インタラクションを行う筋骨格上肢ロボットを開発した.実機において手先の剛性楕円を計測し,リニア電磁アクチュエータの弾性を変化させることで手先の剛性楕円が調整可能であることを確認するとともに,外乱のある環境下でのリーチングタスクを実行した.さらに,アクチュエータの推力/重量比の向上のため,低速高トルクを実現するバーニアモータの原理をリニアモータに応用したリニアバーニアモータを提案した.提案構造は,軸方向に着磁された磁石を用いることにより,堅牢性が高く,小型高推力のアクチュエータが実現できる.有限要素法を用いた磁界解析によって推力を計算し,構造の最適化を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度はリニア電磁アクチュエータを搭載した一脚ロボットの脚先端の剛性を制御することで安定した連続跳躍を実現するメカニズムを提案し,国際学会での発表や学術論文誌への投稿を行った.同時に高推力のリニアバーニアモータについて研究し,国内学会にて研究奨励賞を受賞するなど,複数の研究テーマで重要な成果をあげることができたため.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に開発した手先剛性楕円の調整による柔軟な物理的インタラクションを行う筋骨格上肢ロボットを用い,外乱のある環境下でロバストに動作する上肢ロボットを実現する.制御を考えるにあたり,人の腕のダイナミクスを調べるため,動作中の筋電位計測実験を実施する予定である.リニアバーニアモータについては,実機を製作しシミュレーションによって確認した推力特性が実現できることを確認するとともにロボットへの搭載を検討する.
|