ローレンツ共変性が明白な超弦の場の理論の研究においては、Wittenによる定式化[Nucl.Phys.B276(1986)291]の持つ問題点を解決するために、様々な定式化が考えられてきた。そのような定式化のうち、本研究では特に、Berkovitsによって提案された超弦の場の理論[Nucl. Phys. B459(1996)439; JHEP 11(2001) 047]を扱っているが、平成23年度は前年度に引き続き、作用関数のうちで特にボソンを記述する部分のゲージ固定に取り組み、JHEP 03(2012)030において、まず自由場の理論のゲージ固定を完遂させた。同論文では、幾つかのゲージ固定条件を提案し、対応するプロパゲーターの導出を行った他、自由場の理論の範囲内で、ゴースト場まで含めたゲージ固定後の作用関数が、Wittenの理論とBerkovitsの理論とでどのように対応しているかを示した。また、相互作用がある場合のゲージ固定を扱う上で重要となるBatalin-Vilkovisky形式[Phys. Lett. B102(1981)27]との関係の考察も行った。その後に執筆した論文(JHEPに掲載確定)では、さらに、より一般のゲージ固定条件を考えることにより、プロパゲーターの持つ普遍的な構造を明らかにすることにも成功した。相互作用がある場合に関しては、まだ完全なゲージ固定には成功していないが、問題解決に向けて、Prog. Theor. Phys. Suppl. 188(2011)272において与えた結果を含む様々なアプローチを、現在、論文にまとめているところである。 以上の研究成果は、超弦の場の理論の量子化に向けた取り組みの第一歩として重要であるが、上記の論文に加え、格子上の場の理論においてフェルミオンの持つ対称性について考察した論文もJHEP 01(2012)048として出版された。
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