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2012 年度 実績報告書

消費主義と倫理的消費の関係をめぐる基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 10J00855
研究機関早稲田大学

研究代表者

畑山 要介  早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード倫理的消費 / 消費主義 / フェアトレード / ネオリベラリズム / ソーシャル・マーケティング / 市民運動 / 消費社会論
研究概要

本年度は、研究最終年度として、過去の分析結果をまとめてそれを理論的に総合するとともに、倫理的消費が現代社会のなかにどのように位置づけられるかを分析・考察した。昨年度はフェアトレード・ラベルの機能とフェアトレード商品購入の規定要因を経験的かつ理論的に考察することを通じて、今日の倫理的消費社会を「社会規範ではなく市場原理によって倫理的目標を達成する社会」として理解可能であることを明らかにしたが、本年度におこなったのはそうした社会モデルがポスト福祉国家的な社会編成のなかにおける公共性のひとつのあり方を指示するものであることを明らかにする試みであった。この試みは、消費主義と倫理的消費の関係への問いを次のような問題として再構成するということにほかならない。すなわち、「消費者が各々の私的な関心に動機づけられているにもかかわらず、その消費を通じて倫理的な社会が構築されるというあり方に対して、いかなる説明を与えることができるのか」という問題構成への展開である。この問いに対して(1)自生的秩序論の枠組みで倫理的消費を理解するということ(2)倫理的消費をポスト福祉国家的社会編成という今日的文脈のなかで位置づけるということを試みた。
分析のなかで明らかになったのは以下の事柄である。第1に倫理的消費を「諸個人の関心」という潜在的活力を原動力とする倫理的社会の形成要素として理解・説明することが可能だということ、第2に倫理的消費社会を駆動させるような諸装置が諸個人の潜在的活力を最大限に活用しようとする性格によって特徴づけられるということである。これらの点から、本研究では、倫理的消費社会をポスト福祉国家的社会における新たな公共性のあり方の一端を垣間見せるものであると結論付けた。倫理的な経済文化の維持・形成が国家によって担われるものだとされた福祉国家的社会から、それらが企業や消費者や自由な選択によって担われるものとされるポスト福祉国家的社会への移行という極めて今日的な位相において、「消費主義的な倫理的消費」という新たな現象に対する理解可能性を与えたのが本年度の研究成果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究の目的は、「消費主義と倫理的消費のパラドクス」をいかに理解することができるかという点にあったが、本年度においては、前年度の実証的成果を用いて現代社会の今日的な位相のなかにこの問題を位置付けることによって、当初において問題とされた以上のことが本研究の課題に伏在していたという点が明らかになったため。

今後の研究の推進方策

本年度の研究を通じて、今日的な倫理的経済を構成する新たな潮流が存在することが浮かび上がってきた。本研究はあくまでも消費社会研究という限定的範疇のなかで実施されたわけではあるが、その研究成果を顧みるならば倫理的な生産・流通・消費という経済的なメカニズム全体の新たなパラダイム・シフトの位相のなかに本研究の問題関心は位置付けられることが明らかとなった。今後においては、消費だけでなく倫理的生産、倫理的取引について詳細な分析を展開していく必要があるだろう。現在、報告者は消費者調査のみではなく、フェアトレード認証を取得する企業に対しても調査を実施しており、本研究課題に続く新たな研究展開の準備をおこなっている。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] フェアトレード運動の自由主義的転換〓慈善・開発・対抗の運動からNPO・社会的企業・CSRへ2013

    • 著者名/発表者名
      畑山要介
    • 雑誌名

      ソシオロジカル・ペーパーズ

      巻: 22 ページ: 23-5-

  • [雑誌論文] フェアトレード商品を購入するのはいかなる人か?2012

    • 著者名/発表者名
      畑山要介
    • 雑誌名

      経済社会学会年報

      巻: 34 ページ: 173-181

    • 査読あり
  • [学会発表] 〈倫理の市場〉の成立をめぐる理論的視座2012

    • 著者名/発表者名
      畑山要介
    • 学会等名
      日本社会学会
    • 発表場所
      札幌学院大学
    • 年月日
      2012-11-04
  • [備考]

    • URL

      https://sites.google.com/site/hatayamalab/

URL: 

公開日: 2014-07-16  

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