研究課題
コレステリック液晶は一次元螺旋周期構造を有するため、光を反射させる、あるいは閉じ込める光学特性を示す。そのため、コレステリック液晶はカラーチューナブルな反射型ディスプレイやレーザーデバイスとしての応用が期待される。このようなデバイスの実用化には、電気的なカラーチューニングをいかにして実現させるかといった問題がある。一般的にコレステリック液晶は電界を印可するとカラーではなく液晶分子の配向状態を変化させてしまうため、電界に対する不可逆的な散乱変化しか起こさない。このような問題を解決する手法として、コレステリック液晶の一部の成分を重合させフィルム化する構造(液晶性ポリマー分散型コレステリック液晶:APDLC(Anisotropic polymer-dispersed cholesteric liquid crystal)を提案した。APDLCでは、らせん秩序を有するポリマー部分は電界に反応せず固定されているが、その中に分散されているコレステリック液晶が電界に応答し、可逆的なカラーチューニングを実現することが可能となる。このAPDLCは新規デバイス構造であり、特許出願中(K20110085)である。APDLCの良特性のひとつとして、電界変調の際の光学的な安定性がある。これまでにも、コレステリック液晶の電界チューニングはいくつかの研究グループで実現されてきたが、それらほとんどが電界印可に際して反射強度の劣化を引き起こす光学的な不安定性を示した。これに対し、APDLCでは、ポリマー中の20nm程度の極微小な空間領域にコレステリック液晶が分散しており、電界印可に際してはその局所空間に閉じ込められた液晶分子の再配向によりカラーが変調される原理であるため、400~700nmの波長を有する可視光に対して高い光学的な安定性を有する。実際、この光学的安定性を利用した電界チューナブルなコレステリック液晶レーザーの実現に成功し、その成果が認められ、Advanced Materialsに掲載された。
1: 当初の計画以上に進展している
特許を申請した新規デバイスの特性は、超高速応答性、光学的安定性、高透明性、液晶材料全般に適用できる汎用性など、さまざまな観点から判断しても、大きな技術革新をもたらす発明であると言え、当初の計画以上にレーザーデバイス特性の改善をもたらしたから。
新規デバイス構造を用いることで、これまでの液晶光学デバイス(ディスプレイ、光シャッター、マイクロレーザー、エタロン、波長版、スマートウインドウなど)に超高速応答性および光学安定性を付与することができるため、レーザーデバイスのみならず、多種多様なチューナブル光学デバイスの開発を優先する、
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Japanese Journal of Applied Physics
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