研究概要 |
Ca^<2+>イオンは、様々な生物応答を司る最も重要なセカンドメッセンジャーである。その濃度を制御する細胞内蛋白質(リアノジンレセプター,RyR)には3つのサブタイプが存在し、これらが骨格筋・心筋・平滑筋・脳小胞体に異なる割合で散在し、機能することで中枢神経系が統御されている。しかし、未だ個々の機能及び作用機序の詳細については明確になっていない。そこで、RyRのサブタイプ別の機能を生物有機化学的に解明するためには、RyRと選択的に結合するリアノジンが分子プローブとして有効であると考えた。しかし、リアノジンの天然物そのものは、極めて複雑な分子骨格であるため、直戴的化学修飾による分子プローブへの誘導が困難である。申請者は、C_2対称合成中間体への二官能基同時変換と非対称化反応を鍵反応とするリアノジンの全合成及び、分子プローブの短段階合成法の確立並びに、誘導体分子プローブの創製・活性評価を立案した。 申請者は初年度において2,5-ジメチルヒドロキノンから14工程(9度のこ官能基同時変換反応を含む)で合成したC_2対称合成中間体を四酸化オスミウム酸化によって非対称化し、反応性の高いα-オキソ-橋頭位ラジカル用いた炭素-炭素結合形成を鍵反応として、リアノジンの15位のヒドロキシ基及び3位ピロールエステルを除く全ての10連続不斉中心を有する15-デオキシ-リアノドールの合成を達成した。今年度は昨年度と同一のC_2対称合成中間体から15位に酸素官能基を有する化合物を合成し、昨年度確立したリアノジン骨格構築法を基盤としてリアノジンの3位ピロールエステルを除く全ての炭素骨格及び酸素官能基を有する重要合成中間体を合成した。本合成中間体は、4工程でのリアノドールへの変換および6工程でのリアノドールへの変換が期待できる。また本合成中間体は類縁天然物並びに、直戴的化学修飾による分子プローブへの誘導が可能な構造である。
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