研究課題
ヘキサフィリンは環拡張ポルフィリンの中ではもっともその物性について解明が進んでいる化合物群の一つであり、その多様な構造と、多岐にわたる金属錯体など、これまでに多くの報告がなされている。我々は、向かい合う2つのメゾ位が無置換となった初の安定なメゾ無置換型ヘキサフィリンであるメゾフリーヘキサフィリン、安定な中性ラジカルであるメゾ酸素化ヘキサフィリン、さらに、ビラジカル性を有するメゾジケトヘキサフィリンについて、吸収スペクトル、二光子吸収特性、理論化学計算などから統合的にさらなる物性評価を行い、π共役系の電子数とラジカル性、芳香族性について統合的にその物性評価を行った。また、メゾジケトヘキサフィリンについては詳細な磁気物性測定も行い、そのビラジカル性と、一重項基底であり不対電子が環全体に非局在化していることを実験的にも確認した。これら一連のヘキサフィリンについては新規な金属錯体の合成と物性評価を行い、新たな金属錯体の合成、その動的挙動についても明らかにした。この他にも、これまでに報告の少ない八の字型にねじれた構造を有するヘキサフィリンの外部刺激による構造と芳香族性のスイッチングについての解明や、新たな環拡張ポルフィリン金属錯体の合成と物性調査を行った。以上のように、これまでのメゾアリール置換環拡張ポルフィリンにはない新規な構造、機能、反応性を有する新規な化合物について合成に成功し、物性を明らかにした。この結果は今後のさらなる応用はもちろんのこと、機能化学や錯体化学、磁性化学など様々な分野に広く影響を与えると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載の通り、新たな環拡張ポルフィリン類である中性有機ラジカルやビラジカル種であるメゾ無置換型ヘキサフィリン誘導体についてその物性評価を行い、新たな知見を得、新たな金属錯体の合成や修飾反応の開発にも成功している。研究の過程において新たな方向性の研究も進めることとなり、開殻系と芳香族性の関係のみならず、分子の構造変化と芳香族性の関係についても検討し、有意義な結果を得ている。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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