本研究の目的は、将来の重力波検出器を用いることで、強い重力場での重力理論の検証がどの程度行えるか明らかにすることである。今年度は、将来の重力波干渉計、中でも日本が計画するDECIGOを用いてどの程度重力理論の検証を行うことができるか明らかにすることであった。 本年度はまず、ブラックホールや中性子星連星からの重力波を用いて、一般相対論の最も単純な拡張であるBrans-Dicke理論とmassive gravity理論をどの程度制限できるか計算した論文を発表した。今回は、連星の離心率や自転による歳差運動を考慮したより現実的な解析を行ったところ、DECIGOを用いればBrans-Dicke理論とmassive gravity理論に対して、現在太陽系実験から得られている制限よりもそれぞれ4桁及び3桁強い制限を与えられることがわかった。将来一般相対論からのずれが測定された場合、そのインパクトは計り知れないものになるだろう。 また、DECIGOを用いると年間100万個の中性子星連星からの重力波が検出できると期待されている。これらはブラックホール連星からの重力波をとらえるうえで雑音になる可能性がある。そこで、中性子星連星からの重力波を同定し、一個一個信号を取り除くことができるか評価することが、重力理論の検証を行う上で重要となる。本年度は、瀬戸直樹氏との共同研究により、中性子星連星からの重力波の差っ引きを十分なレベルまで行えるかどうか解析した。計算の結果、現在提案されているものよりも3倍良い感度を実現できれば、重力理論の検証や初期宇宙からの背景重力波をとらえるのに十分な差っ引きを行えそうであることがわかった。 さらに、研究実施計画に記載した通り、本年度は研究成果をメキシコで行われた国際会議で報告し、マサチューセッツ工科大学の研究員(Nicolas Yunes)との共同研究もスタートさせた。
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