研究概要 |
本研究は、光、磁性、電気特性が相関する新規物質を見出すことを目的として推進している。平成22年度は、本研究員がこれまでに得た金属錯体に関する知識をベースとし、シアノ架橋型金属錯体における電気物性の金属イオンおよび配位環境依存性を見出すことを目的とした。 プルシアンブルー類似体はシアノ架橋型金属錯体の一種であるが、一般に、AM_A[M_B(CN)_6]またはM_A[M_B(CN)_6]<2/3>・zH_2Oと表される(Aはアルカリイオン、M_A,M_Bは遷移金属イオン)。本研究では、A、M_A、M_Bの組み合わせを変化させ、様々なプルシアンブルー類似体を合成し、それらの試料に関する電気特性をインピーダンスアナライザーを用いて測定した。 測定した試料の中で、Co[Cr(CN)_6]<2/3>・zH_2OやV[Cr(CN)_6]<2/3>・zH_2Oは高い伝導度を示し、298K、100%RHにおいてそれぞれ1.2×10^<-3> Scm^<-1>、1.6×10^<-3> Scm^<-1>であった。前者の錯体は、伝導度において湿度依存性が確認された(8%RHで3.2×10^<-8> Scm^<-1>)。このことから、プルシアンブルー類似体における高い伝導度は、プロトンが結晶中の水分子を介して伝わっていくというプロトン伝導に起因すると考えられる。また、他のプルシアンブルー類似体において準、伝導度の測定を行った。 平成23年度は、多くのプルシアンブルー類似体について合成を行ったので、これらの錯体において誘電特性を測定し、金属イオンや配位環境の違いが誘電特性に及ぼす効果を統計的に調べる。加えて、強誘電-強磁性錯体の合成および電気測定に関しても研究を進める。
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