研究概要 |
本研究は、光と磁性及び電気特性が相関する新規物質を見出すことを目的としている。平成22年度には、プルシアンブルー類似体の電気伝導度をインピーダンスアナライザーにより測定し、Co[Cr(CN)_6]_<2/3>・zH_2OおよびV[Cr(CN)_6]_<2/3>・zH_2Oが超イオン伝導を示すことを見出し、V[Cr(CN)_6]_<2/3>・zH_2Oにおけるイオン伝導性と磁気オーダリングの干渉効果の初観測に貢献した。平成23年度は、これまでに得た金属錯体に関する知識を基に、研究対象物質としてオクタシアノ金属錯体にも着目し電気物性を測定することにより、オクタシアノ金属錯体における金属イオン及び配位環境が、磁気物性や電気物性に及ぼす影響を詳細に検討することを目的とした。 オクタシアノ金属錯体は、4d及び5d軌道の広がりにより配位数が大きく超交換相互作用が強いという特徴を持っている。また、配位環境に応じて様々な配位構造をとり、構造に柔軟性がある。本年度は、様々なオクタシアノ錯体を合成し、合成した錯体のインピーダンス測定を行いイオン伝導性を検討した。合成は、[M(CN)_8](M=Mo,W,Nb)と3d金属イオンを組み合わせた系に有機配位子を導入することで得た。合成した試料は粉末および単結晶であったが、それぞれX線構造解析を行い、結晶構造を決定した。合成した試料のうち、Mn^<II>と[Nb^<IV>(CN)_8]及び4-アミノピリジンを組み合わせた系は、分析の結果Mn_2[Nb(CN)_8](4-アミノピリジン)_<10>(4-アミノピリジニウム)_2zH_2Oという組成となっており、有機配位子がプロトン化して存在することが見出されている。この試料のイオン伝導度を測定したところ、湿度100%RHにおいて10^<-4>Scm^<-1>という高い値であるという結果が得られている。現在は、これらの結果について再現性を確認するとともに、論文作成を進めている。
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