研究概要 |
(1)新規ミリ波吸収金属置換型ε-Fe_2O_3ナノ微粒子の開発:ε-Fe_2O_3において観測される自然共鳴現象(自然共鳴周波数:f_r=182GHz)の高周波化を目標として、新規磁性酸化物ε-Rh_xFe_<2-x>O_3ナノ微粒子の合成を行った。メソポーラスシリカに硝酸鉄および硝酸ロジウムの混合水溶液を含浸させ、これを大気下で焼成したのち、水酸化ナトリウム水溶液を用いてシリカを除去することによって平均粒径40nmのナノ微粒子を得た。粉末X線回折パターンを測定したところ、試料はε-Fe_2O_3と同じ斜方晶の結晶構造を持ち、ε-Fe_2O_3のFe^<3+>を一部Rh^<3+>で置換したε-Rh_xFe_<2-x>O_3が得られたととが合かった、Rh置換量xの上限については、現在精査中である。ミリ波吸収特性を調べたところ、ε-Rh_<0.04>Fe_<1.96>O_3は185GHz、ε-Rh_<0.07>Fe_<1.93>O_3は191GHzにミリ波吸収を示し、Rh置換によって自然共鳴が高周波化することが分かった。 (2)ε-Ga_xFe_<2-x>O_3におけるサブテラヘルツ領域磁気光学効果の測定:金属置換型ε-Fe_2O_3のサブテラヘルツ波領域における磁気光学効果の測定を行うために、ゾルーケル法を用いて合成したε-Ga_xFe_<2-x>O_3ナノ微粒子をペレット形成したのち、8テスラーパルス磁場を印加することによりε-Ga_xFe_<2-x>O_3の磁場配向ディスクを作製した。テラヘルツ時間領域分光装置に偏光子と検光子を組み合わせることにより、直線偏光したサブテラヘルツ波を試料に入射し、透過光の平行成分および垂直成分をそれぞれ検出した。ε-Ga_<0.23>Fe_1.77O_3の磁場配向ディスクにおいて、回転角は102GHzを中心とする微分型の波長分散を示しており、楕円率は102GHzを中心とするピーク型の波長分散を示した。102 GHzにおける楕円率は0.97であり、直線偏光から円偏光に変換されたことが分かった。また、磁場配向ディスクの向きを変えることで、右円偏光と左円偏光をスイッチできることも見出された。本材料においてテラヘルツ分光法を用いて観測された磁気光学効果は、それまでに可視-赤外光の領域で観測されてきたファラデー効果とは異なり、ジャイロ磁気効果による磁気双極子遷移に起因するという点で、注目に値する。[Opt.Express,18,18260-18268(2010)].
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