研究概要 |
1.円偏光に対する完全透明媒質を実現するために必要な3次元旋光性メタマテリアルの設計を行った。現在のマイクロ波から光領域における金属メタマテリアルの加工技術により作製可能な3次元等方的旋光性メタマテリアルの構造について検討したところ、軸方向に十分長く軸に関して4回対称性をもつ金属らせんを直交する3方向に向けて周期的に配置したような構造を考案するに至った。マイクロ波領域において考案したメタマテリアルを作製するために、電磁界シミュレータを用いて6GHz付近で共鳴的に大きな旋光性を示すメタマテリアルの構造パラメータを見出した。その結果を踏まえて、プリント基板を用いて旋光性メタマテリアルを作製した。本年度は、3次元的に等方的な旋光性メタマテリアルではなく、まず、一軸異方性の旋光性メタマテリアルを作製して、その特性を測定した。測定から、作製したメタマテリアルは、6GHz付近において大きな旋光性を示すことが確認できた。来年度は、3次元的な旋光性メタマテリアルを作製して媒質パラメータ抽出を行い、円偏光に対する完全透明媒質の実現を目指す。 2.電磁誘起透明化を模擬するメタマテリアルによる電磁波の低群速度伝搬と群速度の可変制御を達成するために、電場勾配により誘起される透明化現象(Field-Gradient-Induced Transparency, FGIT)という現象を新たに提案した。提案した現象を実証するために、マイクロ波領域においてFGITメタマテリアルを作製し、透過特性を測定した。その結果、大きな群遅延時間、すなわち、低群速度伝搬が実現できることを確認した。さらに、シミュレーションにより、群速度の可変制御が実現できることも確かめた。来年度は、FGIT現象を利用した群速度の可変制御を実験的に実現する予定である。
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