研究課題/領域番号 |
10J00985
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
正田 悠 北海道大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ピアノ演奏 / 音楽的コミュニケーション / 音響特性 / 身体動作 / 時代様式 / 感情的解釈 / 印象評定 / 心拍ゆらぎ |
研究概要 |
本研究の目的は、西洋クラシック音楽の3つの時代様式(バロック・ロマン・近代)のピアノ演奏を対象として、「演奏者」-「演奏音・身体の動き」-「聴衆」と辿る音楽演奏のコミュニケーション過程をモデル化することである。本年度は、本研究の中心となる「演奏者の音響表現・身体表現は演奏文脈(聴衆あり/聴衆なし)によっていかに異なるか」、「演奏者の意図の聴衆への伝達が、聴取文脈(コンサート場面/音のみ場面)によっていかに異なるか」を明らかにするための実験を行った。具体的には以下の通りである。1.ピアニストN=13)と聴衆n=12-23,N=254)が共に会するような状況下で、演奏者の身体・音響表現と聴衆の印象を調べた(コンサート実験)。2.うち承諾を得た211人の聴衆に、約10週間後、同じ場所で、録音した演奏を聴取してもらう実験を行った(聴取のみ実験)。3.両実験において、承諾の得られた50人には演奏鑑賞中の心拍も測定した。以上の実験を基に、現在「音響特性・身体の動きの分析」、「聴衆の印象評定の分析」、「聴衆の心拍の分析」を並行して行っている。次年度は、以上の分析結果を下に、演奏者-聴衆間コミュニケーションのモデルを構築する。 以上に加えて、本研究の基盤として行った、一人の男性ピアニストに対する事例研究を2本の査読付き投稿論文として作成した(一本は査読中)。具体的な結果は次の2点である。1.演奏者が"芸術的"と表現する身体の動きには、演奏者の楽曲に対する感情的解釈ならびに構造的解釈が十分に反映されている。2.演奏者の感情的解釈は、演奏音を聴取することによって十分に伝わり、視覚情報はこの伝達には関与しない。現在、本年度までに行った研究である、「時代様式がピアニストの身体動作に及ぼす影響」を投稿論文としてまとめており、次年度初頭の投稿を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成する上で必要な実験はすべて終了し、最終年度である次年度は残りの分析とモデル構築を残すのみである。そのため、研究当初の予定通りに順調に研究を進めることができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた、多面的な量的、質的データを統合し、モデル構築を目指す。これらのデータを国際学会誌、国際会議にて公表し、さらなる内容の向上を図る。
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