研究課題/領域番号 |
10J00994
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
谷 友香子 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 炎症の収束 / 好酸球 / 脂質メディエーター / リポキシゲナーゼ |
研究概要 |
(1)炎症収束期に出現する好酸球は抗炎症性メディエーター産生細胞である 急性炎症の収束期に出現してくる細胞として同定した好酸球様の細胞を単離し、産生する脂質メディエーターを測定した。その結果、抗炎症性メディエーターとして知られるプロテクチンD1(PDI)を産生する細胞であることを見出した。この産生は12/15-リポキシゲナーゼ(LOX)欠損マウス由来の好酸球では産生されなかった。さらに、細胞染色の結果より、好酸球が収束期に12/15-LOXを発現する主要な細胞であることが明らかとなった。 (2)好酸球depletionによる炎症収束の遅延はプロテクチンD1を投与することでレスキューされる これまでに、好酸球をdepletionした条件下では炎症の収束が遅延することが明らかにしている。そこで、好酸球が産生する脂質メディエーターであるPDIを投与することによって、好酸球をdepletionしたことによる表現型が回復されるかについて検討した。好酸球をdepletionしたマウスにzymosan腹膜炎を誘導し、炎症誘導12時間後にPD1を投与し、炎症の収束を評価した。その結果、PD1を投与することによって、炎症巣に残存する好中球数および異物をとりこんだ炎症細胞の所属リンパ節へのクリアランスが回復することが明らかとなった。 (3)炎症収束期の好酸球はこれまでに知られている好酸球とは異なるsub-populationである可能性がある 炎症収束期に出現する好酸球が、これまでに知られている好酸球とは質的、機能的に異なる細胞であり、特別なsubpopulationである可能性がある。そこで、炎症収束期の好酸球と、骨髄由来の好酸球およびアレルギー喘息モデルで浸潤する好酸球との比較を行ったところ、両者の遺伝子発現パターンなどが異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の予定であったF4/80^+M1^<10>細胞によるプロテクチンD1などの脂質メディエーター産生能および、メディエーター単独投与時の炎症収束作用について検討することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
(1)炎症収束期の好酸球の性状解析 炎症収束期に出現する好酸球が、これまでに知られている好酸球(アレルギーで浸潤する好酸球、寄生虫感染で浸潤する好酸球、骨髄に存在する好酸球)とは異なり、特別なsubpopulationである可能性がある。これまでに知られている好酸球として、OVAを用いたアレルギー喘息モデルにて肺に浸潤する好酸球を比較対象としてマイクロアレイ解析を行ったところ、炎症収束期の好酸球はアレルギー性好酸球とは異なる遺伝子発現パターンを示した。 そこで、今後は両者の違いを明らかにするため、質的、機能的に異なる細胞であることを明らかにする。 (2)炎症収束期の好酸球の作用機序の解析 炎症収束期に出現する好酸球どの細胞に作用し、炎症の収束を促進しているのかについて明らかにする。
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