研究課題/領域番号 |
10J01036
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
澤勢 一史 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 形式概念分析 / ファイル管理システム / 束構造 |
研究概要 |
ラティス(束)型大規模情報管理システムの問題点として、ユーザに提示する束が複雑化してしまい、関係を把握することが困難になることが挙げられる。束を簡易化してユーザに提示できればシステムはより使いやすくなると考えられるが、簡易化手法の評価手法は存在しない。そこで、束の簡易化手法を考える前段階として、束の複雑さを評価する指標について検討を行った。 束をハッセ図で可視化する際、構造が規則的であれば把握がしやすいとの仮説を立て、ノードの次数の分散に着目した指標を提案した。属性数が3である束をサンプルに検証実験を行った結果、提案指標が妥当であることの示唆が得られた。 加えて、束の作成に手間がかかるとのユーザのコメントに対し、既存の木構造(ディレクトリ構造)から束を構築することで、情報の管理を円滑に行うことを考えた。これを実現するため、ディレクトリ構造から束構造への変換を行うアルゴリズムを検討した。ディレクトリ構造から束構造への変換は、各ディレクトリの名前を属性としてコンテクスト表を作成することにより実現することができた。さらに、束構造から木構造への変換を行う逆変換アルゴリズムも提案した。束構造は複数の木構造に変換可能であるため、属性の優先度を用いた変換を行っている。これらのアルゴリズムに対し、計算時間の測定とユーザによる被験者実験を実施した。必要とされる計算時間は、実用可能な範囲に収まることが分かった。また、被験者によるアンケートより、提案アルゴリズムの有用性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、束の簡易化の前段階として、束の複雑さを表す指標を提案し、学会での発表を行った。この指標を用いることで束の簡易化手法を評価することが可能となったが、束の複雑さには様々な側面があるため、今後も新たな評価指標について検討を行う必要がある。また、木構造と束構造の相互変換アルゴリズムを提案・実装し、計算時間の測定と被験者実験を実施した。その結果、提案したアルゴリズムの有用性を示すことができた。これらの結果をまとめ、英文誌への論文投稿を行った。以上より、全体としては「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、WEB上の画像検索結果を可視化するシステムの構築を行っている。これにより、ユーザは自分が欲しい画像をWEB上から迅速に発見することが可能になると考えられる。問題点は、画像内容を表すテキスト情報の自動抽出である。画像に対応するテキスト情報は、画像と同じホームページに存在すると予想されるが、ホームページのどの部分が画像に対応しているのか、判別が難しい。そこで、ホームページのテキスト情報から重要だと思われるキーワードを選び出し、それを画像に対応付けることを試みる。それに加え、画像の色情報とキーワードを用いて、それらの間にある関係について調査することも検討している。色情報とキーワードの関係が明らかになれば、ユーザが画像検索をする際に入力する検索ワードの推薦に応用できる可能性があり、ユーザの利便性が向上すると思われる。検証用のシステムを構築し、実験を重ねたいと考えている。
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