研究概要 |
raba1a raba1b raba1c raba1d四重変異体は,通常の生育条件では野生型と同様の表現型を示すが,塩ストレス条件下では野生型に比べて強い生育阻害が出ることが分かっていたが,この四重変異体に蛍光タンパク質を融合したRabA1メンバー一つを発現させると,この表現型をある程度相補することを明らかにし,生育阻害の原因遺伝子が確かにRabA1であることと,四つのメンバーが塩ストレス応答において冗長的に機能していることを確かに裏付けた.また,GFP-RabA1bをGDP固定型(優性阻害型)に改変したタンパク質を発現させた植物では,分裂領域の細胞が野生型に比べて大きく,細胞数が少なかった.また,形や並びもいびつになっているものが見られた.一方,GTP固定型(恒常的活性型)改変タンパク質を発現させると,分裂領域の細胞が野生型に比べて小さく,細胞数が多かったが,形や並びの秩序は保たれていた.しかし興味深いことに,恒常的活性型変異体が野生型に比べより早く,あるいは大きく生育するということはなかった.これらのことから,恒常的活性型変異体では,細胞分裂は野生型に比べ盛んになっているが,細胞伸長が伴っていないものと考えられた.また,優性阻害型変異体,恒常的活性型変異体をエンドサイトーシスの追跡試薬であるFM4-64を用いて染色したところ,エンドサイトーシスに大きな異常は認められなかったことから,RabA1メンバーは主に物質の細胞内への取り込みではなく,分泌に関与しているものと考えられた. 本研究により,数多く存在するRab11メンバーの少なくとも一部が冗長的に機能していることが示された.また,これらのメンバーが関与する輸送経路の特性についても明らかになりつつある.さらに詳しいメカニズムを解き明かすためには,その積み荷,また協調的に働く因子を同定する必要がある.そのため現在,IP-MS解析を用いて,RabA1bと相互作用するタンパク質の探索も行い,目的の達成に向け更なる解析を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,RabA1メンバーそのものの局在解析や,欠損変異体・優勢阻害変異体の表現型解析を重点的に進め,重要な知見を得てきた.今後は,相互作用因子の探索を重点的に行うことで更なるメカニズムの解明に努める.当初の計画では各メンバーについて網羅的に相互作用因子の探索を行う予定であったが,RabA1メンバーにある程度の冗長性があることが明らかになったため,まずは一つのメンバーについて相互作用因子を同定し,その因子と他メンバーとの関わりを調べていく方針で研究を進める,
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