本年度は、顔刺激の閾下提示による対象への好意度の変化の様子を測定するため心理実験とそれに引き続きfMRI実験を行い、「親近感」を表象する領域の同定を行うことを目標とした。前期にはfMRI実験を想定した心理実験を行い、重要な実験パラメータである好意度評定の変化を最大化するように刺激条件を設定し、実験手続き上、問題が無いこと、また「親近感」による意思決定の変化を行動データで確認した。後期は予備実験に基づき、被験者18名を対象にfMRI実験を実施し、脳機能画像データの取得、解析を行った。なお、fMRI実験は定藤規弘併任教授の指導の下、自然科学研究機構生理学研究所内のfMRI装置を用いて行った。データ解析の結果、閾下提示された顔刺激の観察中に、紡錘状回顔関連領野や、扁桃体などの顔刺激の情報処理に関連する領野の活動が変化することが明らかになった。この成果は、顔刺激の処理と脳内における「親近感」の表象の結びつきを明らかにするための重要な実験データの一つである。このデータをDynamic causal modelingなどの手法を用いて解析することで、「親近感」を表象する包括的な脳領域ネットワークを明らかにすることが可能になった。 また、本年度は数量判断課題という実験系から、ヒトが意識せず数量の判断に対する注意を切り替えることを明らかにし、ヒトにおける意識せずに行われる行動の最適化の神経基盤を明らかにした。その内容について、学会発表、論文の投稿を行い、現在はデータの精査を行っている。
|