研究課題/領域番号 |
10J01224
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研究機関 | 独立行政法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
澤崎 郁 独立行政法人防災科学技術研究所, 社会防災システム研究領域・災害リスク研究ユニット, 特別研究員(PD)
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キーワード | 地震波伝播 / 異方性変化 / 東北地方太平洋沖地震 / 強震動 / 速度変化 / 相似地震 / デコンボリュージョン解析 |
研究概要 |
昨年度実施した高周波エンベロープ合成法に関する研究成果を論文にまとめ、Journal of Geophysical Research Solid Earth誌に投稿した。同論文は5月に受理された。 高周波震源過程を明らかにするためには、不均質媒質中の地震波伝播過程を正しく評価する必要がある。そのためには、リソスフェア内部の構造と波動伝播の物理に関する理解を深めることが不可欠である。米国コロラド鉱山大学のRoel Snieder教授は、不均質異方性媒質中の波動伝播に関する研究で世界的に知られている。本研究課題を達成するため、2011年4月28日から5月27日まで、および2011年9月5日から2012年3月31日までの期間に同教授のもとに滞在した。 現在申請者は、防災科学技術研究所(防災科研)、東北大学、およびコロラド鉱山大学の研究者と共同で、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う地球内部の速度変化に関する研究を行っている。大地震の直後に生じる速度変化の原因としては、断層すべりに伴う震源域の破砕、地殻変動に伴う応力変化、および強震動による地盤状態の変化が考えられる。これらの素因が速度変化に及ぼす影響を個別に調査するため、防災科研が管理するKiK-netおよびHi-netのボアホール地震観測記録を用い、デコンボリュージョン解析および相似地震解析を行った。その結果、本震直後に地表から深さ100mまででは最大6%、深さ100mから80kmまででは最大0.3%の速度低下を検出した。また、前者では地震動に伴う動的ひずみが、後者では地震時のすべり量が速度変化と良く対応し、深さにより速度低下のメカニズムが異なることを明らかにした。また、浅部においてはS波速度の低下が見られるものの、P波速度およびS波速度の異方性はほとんど変化しないことが明らかとなった。 この研究で検出された速度変化の深さ依存性は、高周波震源過程およびそれに伴う高周波地震動生成のメカニズムを考察するにあたり有益な情報を与えるものであり、本研究課題め遂行上重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であった高周波震源インバージョンの研究に関しては、東北地方太平洋沖地震の発生により他に優先順位の高い研究課題が発生したため、やや遅れている。しかし、同研究課題に関する論文を一本投稿し、米国での共同研究も順調に進んでいるため、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は4月1日から7月末~8月上旬まで米国のコロラド鉱山大学に滞在する予定である。この期間中は、東北地方太平洋沖地震の発生に伴う速度変化に関する研究を行い、年度内に論文を投稿する予定である。また、研究課題である高周波震源インバージョンに関しては、帰国後にエンベロープ合成法及び震源インバージョン法の改良を行い、2003年十勝沖地震や東北地方太平洋沖地震の解析を行う予定である。また、研究計画の一部に挙げた余震の震源インバージョン法の研究に関しては、現在関連分野の研究者との交流を活発に行っており、震源インバージョン法の改良が行われ次第、年内には着手することが可能と考えちれる。
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