研究課題
本研究では、3ヘリウム資源の枯渇により、世界的に急務となっている^3Heガス検出器の代替候補となる中性子シンチレータ材料の開発を目的としている。今年度は、主にマイクロ引下げ法による中性子検出用シンチレータ材料のスクリーニングを行った。中性子シンチレータに求められる特性には、高い中性子捕獲断面積、高発光量などが挙げられる。これらの条件を考慮して、本研究で着目したのが、希土類及びアルカリ土類ボレート材料である。最初の材料候補として注目したのが、イットリウムカルシウムオルソボレートYCa_4O(BO_3)3である。この材料にCe^<3+>やPr^<3+>、Eu^<3+>などの発光中心元素を微量添加した結晶を作製し、そのシンチレーション特性について評価したが、発光量の不足が問題となった。この原因として、発光中心元素が固溶可能な格子サイトが複数あることが放射線励起時のエネルギー輸送過程において、大きなロスを生じていることが考えられた。そこで、本研究で次に着目したのが、複数の格子サイトを保有しないストロンチウムメタボレートSrB_2O_4とカルシウムメタボレートCaB_2O_4結晶である。これらにCe^<3+>を添加したサンプルを同様に作製し、評価した結果、それぞれ放射線励起においてCe^<3+>5d-4f許容遷移に伴う高速な発光が確認され、その発光量はα線照射時におよそ3000-5000photons/5.5MeV-αと非常に優れた特性を示すことが分かった。しかしながら、これら材料には、強いへき開性が見られ、大口径化など産業応用には不向きであるという見解に至った。この結果を受けて、CaB_2O_4同様にカルシウムとボロンで構成されるカルシウムオルソボレートCa_3(BO_3)_2についても検証を行った。Ce^<3+>を添加した結晶においては、発光量が約4500photons/55MeV-αとCe^<3+>:CaB_2O_4結晶とほぼ同等の性能を示すことが分かった。また、この結晶についてはへき開性などは見られず、実用化にも十分対応可能な材料であるという知見が得られた。
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