研究概要 |
1年目で得られた,MEG-fMRI統合解析の結果では,fMRIで定めた賦活クラスター間のフィードフォワード,フィードバックの視覚処理を反映していると考えられる運動透明視に関わる皮質活動が確認され,その結果について国際シンポジウム(IFMBE2011)にて発表を行ったが,結果に個人差があるという問題点があった.そこで結果の個人差の影響を排するために,fMRIのデータについてグループ解析を行い,被験者共通の運動透明視に関連する皮質部位を特定し,その部位を賦活クラスターとして統合解析の計算に用いる手法を提案した.これにより,被験者共通の皮質部位における神経活動の推定が可能になり,また被験者共通の神経活動指標を導出することができた.これらの結果についてMEとサイバネティックス研究会で発表を行い,更なる解析を加えて論文を執筆中である.また,認知活動を反映する非同期的な活動を調べるために,時間周波数解析を適用して注目周波数を決定した後に,帯域通過フィルタを用いて事象関連同期・脱同期を求めた.α,β波帯の事象関連脱同期について運動透明視タスクとコントロールタスクの間に有意な差があることを示し,別途計測した眼球運動計測で得られた行動指標と照らし合わせても,これらの脱同期反応は運動透明視の奥行き決定の処理に関わる神経活動を反映していることを示した.運動透明視について三つの階層組織部位からなるモデルアーキテクチャーが提案されており,ヒトの運動透明視のモデル化を考える上で,(1)低次の視覚野,(2)MT等の動きの処理に関わる部位と(3)頭頂の連合野での神経活動を詳細に調べる必要がある.眼球運動変化と運動透明視知覚の変化を補助的に用い,更に提案した統合解析の手法を用いることで三つの階層組織部位の神経活動を詳細に調査可能なので,提案手法のクラスター設定方法の改良を通じて,次年度の実験及びデータ解析に備えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動透明視タスク時のMEG,fMRIデータに対して,MEG-fMRI統合解析を行い,奥行き順序決定を含む運動透明視の脳活動を高時空間分解能なイメージングに成功しており,また、被験者共通の神経活動指標を求めるための,MEG-fMRI統合解析計算手法を提案することができたので,研究は進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
運動透明視について三つの階層組織部位からなるモデルアーキテクチャーが提案されており,ヒトの運動透明視のモデル化を考える上で,(1)低次の視覚野,(2)MT等の動きの処理に関わる部位と(3)頭頂の連合野での神経活動を詳細に調べる必要が生じた.そこで眼球運動変化と運動透明視知覚の変化を補助的に用い,更に提案した統合解析の手法を用いることで三つの階層組織部位の神経活動を詳細に調べることが可能であるので,提案手法のクラスター設定方法の改良を通じて,運動透明視関連の脳部位の神経活動を高い時空間分解能で再構成し,眼球運動特性とMEG-fMRI統合解析の結果より運動透明視モデルの知見を得る.
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