研究概要 |
カルシウム受容タンパク質であるカルモデュリン(CaM)は多くのCa^<2+>/CaM-依存性酵素の活性化因子として、タンパク質リン酸化酵素群(CaM-キナーゼ)、脱リン酸化酵素(Calcineurin)による翻訳後修飾を介した細胞内情報伝達機構やNO合成酵素(NOS)などの代謝調節酵素の活性化といった多様なカルシウムシグナル伝達を支える中心的な情報変換分子の一つである。本研究では、CaM/標的分子環の相互作用を利用したプロテオミクス解析法を用いることにより、生理的なCaM結合タンパク質の網羅的な同定を行い、Ca^<2+>/CaMを介した新しいCa^<2+>シグナル伝達経路を見出すことを目的としている。申請者は上記の方法を用いてCaMの標的基質分子として36種類の既知のCaM結合タンパク質を同定しており、更に新規Ca^<2+>/CaM結合タンパク質として神経膜タンパク質であるPlastic related Gene 1 (PRG1)が得られた。申請者は、研究結果をBiochemical Journal (IF=5.115)に発表した。(Identification and characterization of PRG-1 as a neuronal calmodulin-binding protein. 2010 Biochemical J. 431, 81)当該研究は、PRG1がCa^<2+>/CaM結合タンパク質であること及び、本分子が海馬神経細胞の樹状突起に存在し、興奮性シナプスのシナプス後膜に局在することを確認し、神経伝達における新しいCa^<2+>シグナル伝達経路の可能性を示唆するものであった。
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