ロドプシンはこれまでG蛋白質共役型受容体(GPCR)スーパーファミリーAの典型的な受容体として注目されており、GPCRの一般的な活性化機構を研究するためのモデルとして研究されてきた。しかしロドプシンは光受容体として特化したため、拡散性のリガンドを結合する一般的なGPCRとは違ってリガンドがレセプターと共有結合している。ロドプシンは拡散性のリガンドを結合するGPCRから進化したと考えられるため、リガンドとの共有結合はロドブシン類の進化を考える上でも重要なイベントだと考えられる。したがって共有結合したレチナールリガンドがロドプシン中でどのような機能を果たしているのか調べることは興味ある研究対象である。 そのためレチナールの結合部位が欠損しているロドプシンの変異体を用いて生化学的・分光学的解析を行った。その結果、レチナールリガンドの効率的な光異性化反応には共有結合は必要ではないが活性状態の生成・安定化に必要であることが分かった。特に、共有結合を欠損したロドプシン変異体の活性状態は不安定で、リガンドをすぐに放出することが分かった。以上のことから、共有結合はこの低アフィニティーリガンドを無理矢理レセプターに留めておき活性状態を維持することによってロドプシンの高活性化能に寄与していると考えられる。 またこの変異体はリガンド非結合状態でGタンパク質を構成的に活性化するため、野生型と比較することによってリガンド依存的な活性状態と構成的な活性状態の違いを調べることができる、その結果、野生型と変異体にはそれぞれ特徴的な応答特性があることが分かり、リガンド依存的な僧性状態と構成的な活性状態の分子特性が明らかになった以上の研究から、ロドプシン類の特徴であろレチナールリガントの生理的意義そしてその分子機構が明らかになった。
|