研究課題
Corynebacterium glutamicumのピルビン酸キナーゼは中枢代謝において、その制御に重要な役割を担っていると考えられている。本研究ではピルビン酸キナーゼ欠失株について、その生理特性の解析を行った。前年度に得られた結果の精度をさらに上げるため、ピルビン酸キナーゼ欠失株とその欠失を相補した株を最少培地を用い、生育に必須のビタミンであるビオチンを十分量加えて精密な培養を行った。この結果、ピルビン酸キナーゼ欠失株では生育量の増大が再現性よく観察された。また生育量増大のメカニズムを明らかにするため、酵素活性測定や転写量測定を行った。その結果、ピルビン酸キナーゼ欠失に起因する代謝の乱れを克服するためにアナプレロティック経路やTCAサイクルの酵素活性を変化させたことが、生育量を増大させることにつながっていることが示唆された。また、更なる発酵生産の効率化を目指し、新たにクエン酸シンターゼに着目した。クエン酸シンターゼはオキサロ酢酸とアセチルCoAの重合反応を触媒する。クエン酸シンターゼの活性低下は菌体内のオキサロ酢酸の消費を抑制することができると考えられる。そのため、ピルピン酸キナーゼとクエン酸シンターゼ活性低下変異を組み合わせた二重変異株は、オキサロ酢酸を前駆体とするアミノ酸発酵のさらなる生産性向上に貢献できると考えた。この二重変異株を構築し、アミノ酸発酵条件で培養したところ、アスパラギン酸生産量がピルビン酸キナーゼ欠失株と比較して2倍に、野生株と比較して8倍に増加した。これは、この二重変異株がさらなるアミノ酸発酵の効率化に有効であることを示すものであり、今後詳細な解析を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、基礎的な知見の集積が完了し、学術論文雑誌に投稿を済ませている。また本年度はより応用を意識した研究にシフトすべく、追加的な変異の導入を試みた。これまでの実験から構築した変異株がさらなるアミノ酸発酵の効率化につながりうるデータが得られており、計画通りの進展が見られていると考えている。
今後は今年度構築した変異株の精密な培養,および解析を進め、産業応用につなげるために必要な知見の集積に努める。手法は既に確立しているため、支障なく研究が遂行できるものと考えている。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: Volume 113, Issue 4 ページ: 467-473
10.1016/j.jbiosc.2011.11.021