本研究の目的は、ペルー北海岸において過去に対する認識の分析から一般の人々へのアプローチ法を確立し、「文化遺産保護」モデルの実現に向けた道筋を構築することである。これまで一般の人々の考古学への関心の程度や関連性について等閑視されてきていることからも、本研究の考古学情報を受信する側の視点を提供できる点は独創的である。 対象地域は、ペルー北海岸に位置するランバイエケ県フェレニャフェ市ポマ森林歴史保護区域である。本研究でいう現地コミュニティとはポマ森林歴史保護区域周辺の集落を指す。地域住民と考古学者との関係性を理解するため、本研究では2010年7月から2011年1月まで(6ヶ月間)ポマ森林歴史保護区域の周辺村落に滞在し、村人へのインタビューを行った。それらに加えて、フェレニャフェ市の住民に対しても、シカン国立博物館の建設がもたらした影響について、無作為にインタビュー調査を行った。彼らが博物館を「地元の一部」と捉えているのか、それともあくまで「外から来たもの」とみなしているのか、博物館をめぐる地域住民の認識について考察を加えた。さらに、博物館と連携して働いている住民や観光業者(特に観光ガイド)、学校の教諭へも同様にインタビューを行った。2011年1月に帰国後総合研究大学院大学にて収集したデータを整理し、調査結果をまとめている。
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