研究課題/領域番号 |
10J01438
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
能島 明史 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 金ナノ粒子 / 固定化触媒 / 塩基性担体 / 協奏効果 / エポキシド / 選択的還元反応 / 分子状水素 |
研究概要 |
本年度は、1,6-ヘキサンジオールからε-カプロラクトンへの酸化反応を行った。ここでは、塩基性担体と金ナノ粒子の組合せが最も高い収率および選択率でラクトンを与えることを見出した。さらに申請者はこれまでに得ている分子状酸素を酸化剤とするジオール酸化触媒系の鍵となっている、固定化金ナノ粒子が担体との協奏効果を用いて、新たな有機合成反応への展開を目指した。固定化金ナノ粒子触媒を用いた環境調和型還元反応についての検討を行った。これらの研究の中で、塩基性担体固定化金ナノ粒子がエポキシドからアルケンへの還元反応を理想的な還元剤である分子状水素などの存在下で効率よく進行させる固体触媒となることを見出した。 エポキシドの脱酸素反応によるアルケン合成は有機合成化学において重要な反応であるが、有毒なヨウ素や重金属試剤を量論量以上用いて行われており、反応後に大量の廃棄物が生じるという問題があった。本年度の研究においては、塩基性層状無機化合物であるハイドロタルサイト(HT)表面上に金ナノ粒子を固定化したハイドロタルサイト固定化Auナノ粒子(Au/HT)が、反応後に水のみを副生する分子状水素を還元剤とした、極めてクリーンなエポキシドの脱酸素反応に対して極めて高い触媒活性、選択性を示すことを見出した。他の貴金属(Pd、Rh、Ru、Pt)ナノ粒子固定化触媒を用いても本反応は全く進行しないことから、本触媒能は金ナノ粒子に特有である。 本反応系において、種々のエポキシドの脱酸素反応において対応するアルケンを選択率99%以上で与えることがわかった。反応中、アルケンのC=C結合の水素化は一切起こらず、反応後には水のみが副生する。さらにAu/HTは反応終了後、ろ過により容易に分離・回収可能で、活性、選択性の低下なく再使用できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固定化金ナノ粒子触媒の設計において、1,6-ヘキサンジオールの酸化反応によって、ε-カプロラクトンを得ることに成功した。本反応においては、用いる担体と金ナノ粒子との協奏効果を利用することによって、他の金属ナノ粒子と異なる触媒活性を発現することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において、ジオールの酸化反応による中員環以上のラクトン合成においては、金ナノ粒子と塩基性担体を用いることで高い収率および良好な選択性を得ている。今後、反応条件の最適化を行い、定量的なラクトン合成反応を目指す。また、本研究課題において鍵となっている固定化金属ナノ粒子と担体との協奏効果を用いた新たな有機合成反応へと展開する。これまでの研究から、金ナノ粒子がエポキシドやカルボニル化合物などの含酸素化合物のC-O結合を活性化することで、これらの還元反応において特異的な活性を示すことがわかっている。今後の研究では、この知見を利用し金ナノ粒子触媒を用いた環境調和型の有機合成を目指す。
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