研究課題/領域番号 |
10J01461
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 善弘 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機分子触媒 / 天然物全合成 / 求核触媒 / アシル化 / グルコース / 糖 / 位置選択性 / ライブラリー |
研究概要 |
糖等のポリオール類は細胞分化や免疫等の様々な生体内反応に関わっており、現在盛んに研究が行われている。しかし、糖関連物質の従来の合成法では多数存在する水酸基を多段階の保護-脱保護を駆使することで区別する必要があり、合成の煩雑さが研究の進展を妨げている状況である。報告者らはこの問題を克服するため、基質認識型触媒による糖類の一段階位置選択的官能基化法の開発に取り組み、現在までに無保護グルコピラノシドの触媒的位置選択的アシル化法を開発している。前年度までに本法を鍵とするアシル化配糖体配糖体天然物multifidoside A及びBの全合成に取り組み、初の全合成を達成している。今年度はこれまでの合成において問題となっていた中間体の合成ルート及び最終段階の脱保護条件の最適化を行い、工程数及び収率を大幅に改善することができた。本合成法は全合成において糖部分の保護-脱保護操作を必要としないことに加え、合成終盤での迅速な誘導化が可能という点も特徴的である。実際合成終盤で同一基質から位置選択的アシル化により様々な誘導体が合成可能であった。以上の結果から本位置選択的アシル化が多官能基性化合物にも適用可能である優れた特性を見出すことが出来た。そこでこの特性を活かし、より多数の水酸基を持つ天然物由来医薬品であるラナトシドCの一段階意選択的官能基化に取り組み、期待通り選択性90%で4''''位選択的に様々なアシル基を導入することができた。さらに反応条件の精査及び計算化学の駆使により基質本来の反応性を最大限に活かしたアシル化が、3''''位水酸基に選択性97%で進行することが分かった。以上のようにして天然物由来医薬品ラナトシドCの従来にはないユニークなライブラリー構築法を開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において当初の計画通り初年度に位置選択的アシル化を鍵とするmultifidoside A及びBの全合成を達成している。また、二年目の研究として計画したグルコース誘導体の4つの水酸基に対する順次置換基導入法についても目処が付いている。これらの研究に加えて、本年度は天然物由来医薬品であるラナトシドCの位置選択的官能基化法を開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については計画通り、位置選択的置換基導入法を基盤とする、抗炎症活性及び prostaglandin E2の放出阻害活性を持つangoroside C、MRSA耐性菌に対する抗菌剤増強作用を持つcorilagin等の配糖体天然物の全合成に取り組む。また計画書には記載していないが、アシル化配糖体の中でもtelephioxanthon B等のC-グリコシド構造を持つ化合物についても、触媒的位置選択的アシル化の可否及び全合成に関する研究を進めたい。
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