研究課題/領域番号 |
10J01479
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
増田 秀樹 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 透過電子顕微鏡 / その場観察 / ナノワイヤ / 金属 / 単一分子素子 / フラーレン / 酸化亜鉛 |
研究概要 |
本研究室で開発した複合機能型電子顕微鏡法を用いて、金属ナノ接点と原子ワイヤー、および単一分子素子について研究した。本年度は、ナノ接点研究に用いる金属種の拡張、孤立単一分子接合系の作製、および単一分子・クラスター接合系に利用する新規ナノ構造の模索を行った。主な4つの成果を示す。 1.これまでその作製は困難であると考えられてきたロジウム原子ワイヤーの観察に成功した。さらにそのコンダクタンスのワイヤー長さ依存性が明らかになった。 2.これまで面心立方構造をとる金属に限られてきた原子ワイヤー構造を、体心立方構造をとる高融点金属(タングステン、タンタル、モリブデン)で作製することに成功した。特に頻度良く原子ワイヤーが観察されたタンタルは、ワイヤー長さが増加するとコンダクタンスが減少する傾向が顕著に現れた。長さ方向の構成原子が増えるとコンダクタンスは減少し、また同じ構成原子数でもワイヤーが長くなる(原子間距離が増加する)と、コンダクタンスが減少する傾向がみられた。今後は原子ワイヤーの力学的な測定を行い、長さ条件とワイヤーの安定性を調べる。 3.単一分子素子実現のため、C_<60>を白金電極で挟んで孤立単一分子系の作製と観察、およびコンダクタンス同時測定を行った。このような系では電極部と分子の接触部の詳細が全体の特性を左右する。この接触部では原子レベルの大きさの相違が接合のコンダクタンスを変化させることがわかった。今後は電極-分子接触部を統一し、コンダクタンスの分子方位依存性を研究する。 4.これまで[0001]を回転軸とするものしか研究されてこなかった酸化亜鉛薄膜中の傾角粒界について、方位関係を拡張し新たに[11-20]を回転軸とする粒界を解析し、新規ナノ構造を模索した。今後は酸化亜鉛ナノ構造の物性研究を目指す。 以上の成果をまとめ、計15報の国際・国内会議講演として発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22-23年度までに、新たに電界放出型の透過電子顕微鏡を用いたその場実験法を確立し、金属ナノ接点のデバイス応用のためにその材料種を拡張するという目的はおおむね着手され、順調に進行している。もう1つの目的である顕微鏡内その場分光法は平成24年度(最終年度)に行う予定である。このため計画は順調である。また、本研究の進行中には、単一分子接合やセラミクス材料に関する新しい知見も得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き金属ナノ接点系の構造と物性の対応を研究する。手法開発面では、その場電子顕微鏡法に複合する物性測定機能として分光装置を組み込んだ試料ホルダーの開発・実装を行う。材料種の拡張に関しては、貴金属、高融点金属に引き続き、磁性元素と軽元素の金属、および半導体について実施する。また金属ナノ接点の素子応用の一つとして、単一分子素子の作製と特性評価を実施する。
|