研究概要 |
同種造血幹細胞移植後の免疫再構築および移植片対腫瘍効果の発現は、再発率の低下および感染症等の移植後合併症の低下と相関する。免疫再構築および移植片対腫瘍効果の発現を目指した移植後のドナーNK細胞輸注療法は一部の患者に対しては効果を認めたものの、多くの患者に対しては不十分であった(Rizzieri DA,et al.BBMT 2010)。そこでNK細胞輸注と同時にIL-2等を投与することにより、直接的あるいは樹状細胞を介して間接的にNK細胞を活性化させること目指し、新規NK細胞療法のプロトコルをデューク大学において作成した。また、臍帯血移植後の免疫再構築を評価するため、NK細胞をはじめとした各免疫担当細胞の詳細な解析を進めるとともに、あらたにT細胞レパトワ、TREC等を測定し、他のHLA適合同胞・非血縁末梢血幹細胞を用いた移植との比較検討を行った。HLA不適合複数臍帯血移植においてはNK細胞の回復が他の移植ソースと比較して明らかに早く、またその他の免疫担当細胞は移植後3か月の時点では回復が遅れるものの半年以降は良好であった。さらにHLA不適合移植のアウトカムに影響を及ぼす移植前リスク因子を明らかとするため、日本造血細胞移植学会および日本骨髄移植財団に登録された血縁者・非血縁者間移植のデータを用いて後方視的コホート研究を行った。GVH方向HLA1抗原不適合血縁者間移植とHLA8アリル適合非血縁者間移植の移植成績の比較を行なったが、GVH方向HLA1抗原不適合血縁者を用いた移植において有意に全生存率が低下していることが明らかとなった。その中でもHLA-B抗原不適合群において、明らかに生存率が低下していた(Kanda,J et al.Blood 119:2409-2416,2012)。これはHLA-B抗原不適合群においてHLA-C抗原不適合の頻度が高いことが原因の一つと考えられる。NK細胞受容体リガンド(HLA-C抗原等)とNK細胞受容体の不適合により、移植片対腫瘍効果や移植片対宿主病に差がでることが報告されており、HLA-C抗原不適合と移植成績に関して多いに興味がもたれた。
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