本研究は、宗教の社会貢献活動を対象に、特に社会関係資本と社会運動の側面に焦点を当て、宗教が担う社会的な役割の特徴を明らかにすることを目的とする。本年度は、以下の3点を行った。1)「社会貢献活動の事例研究」:地域での社会貢献活動を行う教会と寺院を対象にインタビュー調査、参与観察、文献収集を実施し、その調査結果を、前年度に申請者が関わった質問紙調査の結果を照らし合わせながら検討した。この結果、活動の展開の面でも活動主体の意識面でも、宗教者や信者が行う社会貢献活動には政治領域への連動の可能性があることへの危惧があり、今後の研究で検討すべき課題であることを確認した。2)「先行研究の検討」:アメリカにおける宗教社会学領域の学術専門雑誌(Journal for the Scientific Study of Religion等)から抽出した当該領域の論文を検討した。この結果、非キリスト教文化圏において、宗教・社会関係資本・ボランティア活動の関連の妥当性を実証的に論じることが重要課題であることが確認され、本研究もこうした国外の研究と接続させて論じる必要があることが判明した。3)「公開二次データを用いた計量分析」:特に2)で解明された課題についてJapanese General Social SurveyとWorld Values Surveyという二つの公開二次データの計量分析を行った。この結果、現代日本においても、各種ボランタリー組織への所属や地域ボランティア活動への参加などについては、宗教との間に有意な正の関連がある可能性が示唆された。研究成果は以下のような形で公表された。論文3本(査読有1本、査読無2本(共著1本))、口頭発表4本(国際学会2本、国内学会2本)。また、次年度で更に研究成果を報告できるよう、現在論文を執筆中である。
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