研究課題
本研究では、電位センサータンパク質であるVSOP(電位依存性プロトンチャネル)の電位感知メカニズムをはじめとする基本的な性質を、電気生理学的な手法(主にパッチクランプ法)と物理化学的手法(主に赤外分光法)を組み合わせて明らかにすることが目標である。本年度の研究成果の概要を以下に記述する。前年度において活性のあるマウス由来VSOPを発現する系を確立した。本年度は計測に向けての改善と活性測定の定量化を行っている。1.一般的に、赤外分発計測に必要なサンプル量は数マイクログラム程度でもよいが、精度よくスペクトルを測定するには数ミリグラム程度の大量のサンプルが必要となる。水溶液中でも測定可能な全反射赤外分光法にて基質結合やpH変化に伴う構造変化の解析を行ったが、精度のよいスペクトルを得ることができなかった。前年度に引き続き、タンパク質と脂質の比率を見直すなど条件検討をし直している。2.VSOPはそもそもin vitroの系を用いた解析がほとんど行われていない。そこでリポソームに再構成したVSOPを、内外のイオン濃度の違いで発生する膜電位によって活性化させる。すると膜を隔てたプロトンの輸送が起こり、これを外液のpH変化として検出できるのでプロトン輸送活性を評価することができる。このように定量的にプロトン輸送活性を測定する系を確立した。この系を用いて、pH依存性や薬剤に対する応答性も評価できるので今後さらに活用できると考えている。3.リポソームを直径10マイクロメートル以上に巨大化したジャイアントリポソームを作製してガラス電極を当てるパッチクランプ法での電気生理学的な解析も試みている。
3: やや遅れている
赤外分光法と電気生理学的手法による研究を進めてきたが、リポソーム外液のpH変化を計測する比較的簡便な手法により精製VSOPのプロトン輸送活性を測定する系を確立できた。この手法の活用により、定量的な解析が可能であり当初の目的達成に一定の効果があると考えている。
今後も本年度と同様の方向で研究を進めていく方針である。まずは測定条件に合わせてサンプルのさらなる改善・最適化を行う。電気生理学的手法については目標とする電流が一般的なチャネルの1/10~1/100と想定されるので機器の性能向上も目指す。リポソーム外液のpH測定による解析では薬剤による効果などを検証することで電位センサータンパク質の性質に迫ることができると考えている。
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http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/phys2/okamura/index.html