研究概要 |
初年度は電解重合可能な種々の芳香族モノマーを合成し、ラビングによる巨視的配向を施したネマチック液晶(6CB)中で電解重合することで光学的一軸性を有する高分子薄膜の合成を試みた。モノマーとしては中央にfluoreneもしくはcarbazole骨格を有し、その両端にthiopheneやfuranや3,4-ethylenedioxythiopheneといった芳香族環を有するものを合成した。特にcarbazoleを含むものに関しては、N位に長さの異なるアルキル鎖を導入することで分子形状の異なるモノマーを合成した。合成したモノマーを、配向させた液晶中で電解重合することで高分子薄膜を作製し、これらの偏光吸収スペクトルを測定した結果、薄膜は直線偏光二色性を示した。また、側鎖を有しない棒状に近いモノマーほど高い二色性を有する薄膜が得られた。このことから長いアルキル側鎖は液晶中での高分子主鎖の配向を妨げるものと考えられる。得られた薄膜は目視で確認できるほど高い二色比を示すものもあり、酸化還元によるスペクトルの変化を観察すると、薄膜は二色性を保ったままスペクトルが変化し、主鎖のπ-π^*遷移に由来する低波長側の吸収帯だけではなく、酸化状態におけるポーラロンに由来する長波長側の吸収帯においても二色性を有することが確認された。このように酸化還元によって、直線偏光二色性を有するポーラロンバンドの発現を制御した例はこれまでにほとんどない。さらに、偏光顕微鏡による観察から、薄膜はマクロスコピックないしメゾスコピックな領域において高分子主鎖が均一に配向していることが確認された。以上の結果から、液晶中での電解重合によって、高分子主鎖の配向を制御することが可能であることが示された。
|