研究課題
中枢神経疾患(脳卒中、脊髄損傷など)を持つ患者において、歩行能力の獲得は、リハビリテーションの重要な目標である。特に歩行周期中に必要な筋を適切な時相で活性化することが、歩行動作の獲得には重要である。特に、痙縮の存在は、歩行動作の阻害要因の1つと考えられている。この痙縮に対して、ペダリング運動(自転車漕ぎの運動)が有効なことが報告されている。また、痙縮筋の拮抗筋に対する電気刺激についても、痙縮の改善に有効なことが知られている。今回、ペダリング運動中に電気刺激を組み合わせて行うことによる脊髄相反性抑制の変化を、健常者12名で検討した。介入は、ペダリング運動+電気刺激(以下、PE-ES)、ペダリング運動のみ(以下、PE)、電気刺激のみ(以下、ES)の3課題を、3日以上の間隔をあけて全対象者に実施した。すべての課題で、実施時間は7分間とした。評価は、ヒラメ筋H波を用いた条件-試験刺激法により、2シナプス性相反抑制を測定した。測定は介人前後、15分後、30分後に実施した。課題間の比較では、PE-ESによるヒラメ筋へのla相反抑制が、介入直後、15分後に他の課題(PE・ES)と比較して有意に増加した(p<0.05)。また、介入ごとの検討においては、ペダリング運動と電気刺激を組み合わせることにより、介入前直後、介入前と15分後に有意差を認めた(p<0.01)。PEおよびESにおいては、介入前後で有意な増加を認めた(p<0.05)。今回、健常者において、ペダリング運動中に電気刺激を組み合わせて行うことによって、個々の介入単独よりla相反抑制が増強することが示された。今回の結果から、脳卒中患者の痙縮に対する新しい治療法の可能性が示唆された。本研究の結果は、第45回日本理学療法学術大会(平成22年5月、岐阜)、Neuro2010(平成22年9月、神戸)、29th international Congress of Clinical Neurophysiology (平成22年10月、神戸)で発表した。
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理学療法ジャーナル
巻: 44 ページ: 603-609