研究概要 |
次の3点を中心に研究を実施した.1.速度が曲面の非局所的性質に依存して決まる曲面の発展方程式.(Guy Barles教授(Tours大学),Olivier Ley教授(Rennes大学)との共同研究)2.結晶成長をモデルとした非強圧的Hamilton-Jacobi(HJ)方程式の解の時間無限大での漸近挙動.(儀我美一教授(東大),Qing Liu氏(東大)との共同研究)3.非定常HJ方程式の境界値問題の解の時間無限大での漸近挙動.(Guy Barles教授との共同研究) 研究1では,非局所性を含んだ一般的な曲面の発展方程式の等高面方程式について考察し,その解の一意性に関する結果を得た,この結果は,同方程式に対する等高面の方法の正当性を保証する基礎的結果である.その応用例として,材料工学に現れる転位の時間発展を記述するモデル方程式,神経細胞学に現れるFitzHugh-Nagumo方程式のある極限方程式を含む.同方程式は,解の比較定理が成り立たないため,一意性を示すのが大変難しい,解の安定性に関する詳細な結果を利用する事で成功した. 研究2では,結晶成長のモデルを動機とした方程式を解析し,非常に薄いファセット成長に起こる不安定性に対して,数学的な裏付けとなる説明を与える事に成功した.この際に現れる方程式は,非強圧的なハミルトニアンを持つHJ方程式である.同方程式に対する時間無限大での漸近挙動の研究は今までに大変少なく,純粋数学の観点からも大変意義がある. 研究3では,非凸型HJ方程式について考察した.非凸型HJ方程式は応用上の観点からも大変重要な方程式にもかかわらず,凸型HJ方程式に対する研究に比べて,それほど多くの研究があるとは言えない.本研究は,境界条件が,どのように解の時間無限大での漸近挙動に影響を与えるかを解明した.
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