研究概要 |
可視光宇宙背景放射には赤方偏移10から現在までに放射された光が記録されており、銀河や活動銀河核の形成、宇宙大規模構造の成長を考察するための重要な物理量であるが、背景放射に比べて圧倒的に強い前景光に妨げられて、いまだに確かな測定結果は得られていない。本研究は可視光宇宙背景放射の検出および、その強度の測定が目標である。我々が用いている暗黒星雲を利用した手法では、暗黒星雲とその周辺の空の可視光の輝度を比較することで地球大気の光や太陽系のダストによる前景光を分離し、さらに遠赤外線との比較によって銀河系のダストによる散乱光を分離することで背景放射を測定する。このために我々は可視光において暗黒星雲とその周辺の広い領域の空の輝度を精度よく測定する必要がある。平成22年度は東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡を用いて、Lockman Hole近傍の分子雲の可視光撮像観測を行った。その成果は以下のとおりである。1.R,g,Bの3つの波長帯において分子雲を含む約7平方度の空の観測データを取得した。2.可視光観測の精度を向上させるために新たな強度較正の手法を考案した。これは望遠鏡の姿勢を変えて同じ場所を観測することにより検出器の感度特性の非一様性を取り除くというものである。この感度特性の非一様性は観測する領域を広くすればするほど輝度に大きな誤差を生じさせることになるため、広い空を観測する際に大きな問題となっていた。今回考案した手法によって空の輝度の測定誤差はこれまでの1/5以下に抑えることが可能となった。
|