研究概要 |
可視光宇宙背景放射には赤方偏移6から現在までに放射された光が記録されており、銀河や活動銀河核の形成、宇宙大規模構造の成長を考察するための重要な物理量であるが、背景放射に比べて圧倒的に強い前景光に妨げられて、いまだに確かな測定結果は得られていない。 本研究では、暗黒星雲とその周辺の空の可視光の輝度を比較することで地球大気の光や太陽系のダストによる前景光を分離し、さらに遠赤外線との比較によって銀河系のダストによる散乱光(銀河拡散光)を分離することで背景放射を測定する。このためには可視光において暗黒星雲とその周辺の広い領域の空の輝度を精度よく測定する必要がある。 平成23年度の成果は以下のとおりである。 (1)東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡および、名古屋大学MOA-II望遠鏡(ニュージーランド、マウント・ジョン天文台)を用いて、可視光領域をカバーする5つの波長帯(u,g,B,V,Rバンド)での観測を行った。 (2)東京大学木曽観測所/天文学教育研究センターで新たに開発された、超広視野カメラ、KWFC(Kiso WideField Camera)を用いた試験観測を開始した。このカメラは従来の観測装置の6倍の面積の空を一度に観測することができ、さらにノイズも大きく軽減されるため、本研究の遂行に非常に適したカメラである。 (3)以上の観測で得られた合計7つの高銀緯ダスト雲および、1つのブランクフィールドのデータの解析を行い、可視光の輝度と遠赤外線の輝度の間にはどの波長帯においても相関が見られることが確認された。これにより銀河拡散光の可視光におけるスペクトルの形を得ることができる。銀河拡散光のスペクトルを決定することは、可視光背景放射を抽出するために必要となる前景光の除去の精度を高める上で非常に重要であり、本研究の目的達成向けた重要なステップである。
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