研究概要 |
本年度の研究においては、可燃ごみ処理の問題に端を発し、一年の間に二度の市長選挙が行われた東京都小金井市に着目し、二度目の選挙となった12月18日の市長選挙から約2ヶ月後の2月中旬より、郵送調査を実施した。市内の有権者2,332名(40人に1人の割合で無作為抽出)を対象として実施した結果、回収数は847件に達した。 2011年4月の選挙では、四期目を目指した現職の稲葉孝彦を新人の佐藤和雄が破り当選を果たしたが、可燃ごみ処理の外部委託をめぐる選挙時の佐藤の発言が周辺市の反発を招いたことから、小金井市の可燃ごみの受入れがストップし、就任からわずか半年余りで辞職に追い込まれた。その後の出直し選挙では稲葉が返り咲きを果たしたが、その要因の一つは、「反稲葉」の候補が一本化されなかったことにあった。 こうした一連の選挙状況も反映して、12月の市長選挙における投票理由を概観すると消極的な記述が目立ち、明確な争点があったにもかかわらず投票率が伸び悩んだ出直し市長選では、投票に行った人でも積極的な選択をした有権者は必ずしも多くなかったと言える。ただ、全体としてみれば、ごみの減量やリサイクルに対する市民の意識は高く、政治に対する関心も比較的高く、また投票義務感や政治に対する信頼なども決して低いわけではないことも、調査結果から明らかとなった。したがって、出直し市長選挙における市民の積極的な参加および投票行動が見られなかったのは、市民のごみ問題や選挙に対する関心自体が総じて低かったというわけではなく、ごみ問題に関する各候補の主張に明確な違いを見出しにくかったことや、候補者が乱立し選挙の構図が分かりにくいものとなったことなどが影響していると思われる。他方、4月の選挙で佐藤に投票した人に関しては、棄権に回る人の割合が相対的に高かったと言える。
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