XY型の性染色体構成を持つホオジロクロガメ(Siebenrockiella crassicollis)とスジオオニオイガメ(Staurotypus triporcatus)を対象として、性染色体に連鎖する機能遺伝子群を同定し、カメ類における性染色体の起源とその分化過程について考察した。スッポンの染色体DNAを用いた染色体ペインティングの結果にもとづき、ニワトリ5番染色体連鎖遺伝子のS.crassicollisホモログを15個クローニングし、FISHマッピングを行った結果、全てがXY染色体にマッピングされた。この結果は、S.crassicollisのX染色体とニワトリ5番染色体が相同であり、性染色体の起源が哺乳類、鳥類、ヘビ類の性染色体とは異なることを示している。また、今回の結果ではY染色体に遺伝子の欠失が見られず、性染色体の分化が初期段階にあることが示唆された。同様に、S.triporcatusにおいて、これまでにニワトリZ染色体連鎖遺伝子のS.triporcatusホモログを6個クローニングしてマッピングした結果、5個がXY染色体にマッピングされ、1個がX染色体にマッピングされた。この結果は、S.triporcatusの性染色体はS.crassicollisの性染色体とは起源が異なり、鳥類の性染色体と同じ起源をもつ、つまり鳥類とS.triporcatusの共通祖先が保有していた同一の常染色体がそれぞれの系統で独立に進化して現在の鳥類とS.triporcatusの性染色体が形成されたこと、そしてカメ目の性染色体の起源が多様であることを示している。現在は、S.triporcatusの性染色体の分化過程を調べるため、さらに多くの遺伝子のクローニングを進めている。また、これと並行して、マイクロディセクション法によってS.crassicollisとS.triporcatusの性染色体のヘテロクロマチンを構成する反復配列の単離を試みている。
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