研究概要 |
出芽酵母において液胞酵素であるApe1及びAms1はオートファジーを介して選択的に液胞へ輸送されることが知られており,両者の選択的な液胞への輸送にはレセプタータンパク質であるAtg19が重要な役割を担っている.本研究では積荷であるApe1及びAms1と,Atg19との複合体の立体構造を明らかにし,選択的オートファジーにおける積荷認識機構を解明することを目的としている.選択的オートファジーは神経変性疾患等の原因となるタンパク質凝集体の分解に関わっており,本研究は将来的に行われる応用研究に対して,重要な基礎研究になるであろう.今年度(H23年度)は昨年度に引き続きApe1-Atg19 Coiled-coilドメイン(CCD)複合体の結晶構造解析に取り組んだ.昨年度までにApe1-Atg19CCD複合体の微結晶を得ており,結晶化条件の最適化を試みたが,構造解析に適した良質な結晶は得られなかった.そこで,Ape1全長ではなくAtg19結合領域であるApe1プロペプチド領域を用いてAtg19CCDとの共結晶化を試みた.結晶化に用いる領域を種々検討した結果,板状の結晶を得ることに成功した.得られた結晶のX線回折データを測定したところ,1.9Å分解能での回折データを収集した.次年度は位相決定のため,セレノメチオニン置換体を調製,結晶化し,Ape1プロペプチド-Atg19CCD複合体の立体構造決定を目指す. もう一方の積荷であるAms1について,これまでに得られていた結晶において重原子誘導体を作製し,多波長異常分散法により位相を決定した.また,Ams1とAtg19のAms1結合ドメイン(ABD)との複合体を調製し,結晶を得ることに成功した.次年度は決定したAms1単体の立体構造をモデル分子として用いて,分子置換法によりAms1-Atg19ABD複合体の立体構造決定を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は選択的オートファジーの積荷認識機構を明らかにするため,積荷であるApe1及びAms1とレセプタータンパク質Atg19との複合体の立体構造を明らかにすることであり,現在までにApe1プロペプチド-Atg19CCD複合体及びAms1-Atg19ABD複合体の結晶を得ることに成功した.次年度でこれらの立体構造決定を目指すため,現在までおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後はApe1プロペプチド-Atg19CCD複合体及びAms1-Atg19ABD複合体の結晶構造から相互作用に関与しているアミノ酸残基を同定し,in vivo, in vitroの両面から複合体形成に重要なアミノ酸残基を明らかにし,Atg19の積荷タンパク質との結合様式を解明する.また,オートファゴソーム形成のメカニズムの知見を得るため,Atg8-Atg19-Atg11複合体の結晶構造解析についても推し進める.
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