機械受容チャネルは低浸透圧ショック応答においてセンサー分子としてはたらく。真核生物の浸透圧応答機構を明らかにするために分裂酵母の機械受容チャネルMsy1とMsy2の機能解析を行った。分裂酵母のmsy1とmsy2の遺伝子破壊株は低浸透圧ショック後に細胞の生存率が著しく低下することから、Msy1とMsy2の機能は低浸透圧ショック応答に関与するものと考えられる。今年度は以下の研究計画を行った。 1).蛍光観察法と超遠心膜分画法を用いて、Msy1とMsy2の細胞内局在を調べた。 C末端領域に蛍光ラベルをして、顕微鏡下で細胞内局在を調べた結果、Msy1は核周辺小胞体、Msy2は細胞膜直下の小胞体にそれぞれ局在していることを明らかにした。またスクロース密度勾配法を用いて膜分画を行い、Msy1とMsy2の局在が小胞体にあることを確かめた。これらの結果は、Msy1とMsy2が小胞体で浸透圧を感知していることを示唆する。 2).Ca^<2+>イメージングを用いて、Msy1とMsy2の低浸透圧ショック応答における機能を調べた。 低浸透圧ショック時にどのようにはたらくのかを調べるためにCa^<2+>センサータンパク質であるYellow Cameleonを用いたCa^<2+>イメージングを行った。分裂酵母は低浸透圧ショック時に細胞の膨張に伴って、細胞内Ca^<2+>レベルを上昇させた。この細胞内Ca^<2+>レベルの上昇はmsy1-^msy2^-遺伝子破壊株において、異常に高いことを明らかにした。これはMsy1とMsy2は細胞内Ca^<2+>レベルの制御にはたらくことを示唆している。 上記により、分裂酵母のMscSホモログが小胞体膜上に局在し、低浸透圧ショック応答時に細胞内Ca^<2+>濃度を制御していることが明らかにされた。大腸菌において機械受容チャネルMscSは、細胞膜上で低浸透圧ショックによる細胞の膨張の感知にはたらく。一方で、分裂酵母のMsy1とMsy2は細胞内オルガネラ膜上で低浸透圧ショック応答にはたらいている。これは、真核生物の浸透圧応答は細胞膜だけではなく、細胞内オルガネラも浸透圧を感知していることを示している。
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