本年度は、実施計画に基づき、レーザー光照射によるDNAからコール酸ナトリウムへの可溶化剤置換を試みたが、置換は見られなかった。そこでナノチューブ可溶化剤の置換挙動について調査した。可溶化剤は、コール酸ナトリウムとDNAを用いた。各可溶化剤の溶液濃度と可溶化剤の置換率、温度の関係を調べた。可溶化剤の置換率は、吸収スペクトルおよびフォトルミネッセンスのピーク波長のシフトを用いた。この結果、可溶化剤置換が協同的に起こることを見いだした。また可溶化剤置換反応の協同性、平衡定数、熱力学パラメータを、カイラリティの異なるナノチューブそれぞれについて実験的に決定した。そして、加熱によって、計画とは逆である、コール酸ナトリウムからDNAへの置換が進行することを明らかにした。この成果の意義および重要性は、レーザー光照射による置換についての、濃度条件や温度条件などの基本的な実験条件を求めたということである。またこの成果は、ナノチューブ可溶化剤置換反応、およびナノチューブと可溶化剤の相互作用解明という観点からも、特に汎用的な実験手法を見いだしたという点で、意義深い成果である。これらの成果は福岡で開催されたPost-symposium of NCSS2010など国内外の国際学会で発表を行った。またこれらの成果は、現在論文投稿準備中である。
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