研究課題
プロスタグランジン(PG)受容体は、発現する細胞の種類や分化・成熟度合いにより共役するシグナル伝達経路を変化させ、これがPGの炎症性応答を決定する。しかしPG受容体によるシグナル伝達共役の相違が各細胞のどのような差違に起因するのかは不明である。そこで研究代表者は、「PG受容体には、細胞特異的な相互作用タンパク質が存在し、これが足場として働き、細胞や分化度合いに依存したシグナル伝達を実現する」と仮説を立て、PG受容体の相互作用タンパク質の単離をめざした。本研究の目的は、細胞特異的な受容体シグナリングの分子機構を明らかにし、生体におけるPGの炎症病態作用の発現における意義を明らかにすることである。今年度は、EP1、EP2、EP4、FPの各受容体のC末端ドメインをbaitとした酵母Two-Hybrid法により、骨髄ライブラリーから相互作用タンパク質を探索した。その結果、EP2と相互作用するクロンとしてHSPA5(heatshock 70k Daprotein 5)のC末端約1/3をえた。またこの相互作用はEP1-EP4の内、EP2に対して選択的であった。HSPA5は従来、小胞体における分子シャペロンと捉えられてきたが、近年、細胞質や細胞質膜へも局在することが見出され、細胞膜受容体と相互作用する可能性は興味深い。またこの他にも興味深い相互作用タンパク質の候補を見出している。一方、代表者は、アラキドン酸炎症モデルを用いて、PGE_2とPGI_2が急性炎症を惹起すること、さらに前者の作用はEP3受容体を介してマスト細胞の脱顆粒とサイトカイン産生を介し、一方後者の作用はマスト細胞以外のIP受容体を介することを明らかにし、PGによる炎症惹起作用が細胞特異的な二つの受容体シグナリングを介して発揮されることを見出した。
4: 遅れている
yeast two hybridは本来、可溶性タンパク質に対して用いられる手法であり、今回の様に膜タンパク質に適用する場合は細胞内ドメインのみを用いざるを得ない。しかし、こうした部分配列を用いた場合、相互作用は弱くなりがちであるり、意味のある相互作用なのかの判断が困難であった。
HSPA5の全長配列を単離し、全長での相互作用を酵母Two-Hybridおよび発現細胞での免疫沈降を用いて確認する。その上で、受容体膜発現、リガンド刺激による相互作用の変化、cAMPおよびPI-3Kシグナルに与える影響等を中心に解析を進める。
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J Lipid Res
巻: 52 ページ: 1500-1508
10.1194/jlr.M013615