プロスタグランジン(PG)受容体は、発現する細胞の種類や分化・成熟度合いにより共役するシグナル伝達経路を変化させ、これがPGの炎症性応答を決定する。しかしPG受容体によるシグナル伝達共役の相違が各細胞のどのような差違に起因するのかは不明である。そこで研究代表者は、(1)PG受容体の相互作用タンパク質を分子生物学的に単離することで細胞特異的シグナルにおける意義解明をめざすとともに、(2)研究代表者の有するin vivoならびにin vitro解析系を駆使することで、PG受容体による新たな細胞特異的シグナル伝達の分子機構の解明を試みた。本研究の目的は、細胞特異的な受容体シグナリングの分子機構を明らかにし、生体におけるPGの炎症病態作用の発現における意義を明らかにすることである。 当該年度の研究成果は以下の通りである。 (1)PG受容体のC末端ドメインをbaitとした酵母Two-Hybrid法により、HSPA5(heat shock 70kDa protein 5)を始めとする複数の相互作用タンパク質の候補を見出した。現在、PG受容体シグナルへの関与を解析している。 (2)アラキドン酸炎症モデルを用いて、PGE_2とPGI_2が急性炎症を惹起すること、さらに前者の作用はEP3受容体-Gi/o-細胞外Ca^<2+>流入を介してマスト細胞の脱穎粒とサイトカイン産生を介し、後者の作用はマスト細胞以外のIP受容体を介することを明らかにし、PGによる炎症惹起作用が細胞特異的な二つの受容体シグナリングを介して発揮されることを見いだした。 (3)マスト細胞において、PGI_2-IP受容体は、IL-33誘導性サイトカイン産生を抑制すること、IP受容体の作用は、cAMP-PKAシグナル経路を介することを初めて明らかにした。
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