本研究『樹木細根の成長・枯死・分解過程における生理的機能の解明』の目的は、根が発生してからの時間変化に伴う根の生理特性の変動を、根の呼吸活性を指標に明らかにすることである。 本年度は、根呼吸活性の基礎情報として、まず成長してから間もない生きている根を対象に調査した。具体的には、根呼吸速度がどのような要因に規定されているかを調べるため、根と相利共生関係にある菌根菌、および炭素供給源である光合成速度との関係を重点的に測定をおこなった。 菌根菌と根呼吸の関係の結果では、菌根菌の感染の有無は、コナラ苗の根呼吸を向上させ、炭素交換機能を高めることが明らかとなった。また菌根菌の感染は、根の形態特性を変化させ、資源獲得に最適な形態を形成させることが示された。これらのことより、菌根菌との相利共生は、樹木の生理機能を高める重要な役割を担っており、森林の炭素フローを評価する上でも、必要不可欠な要素であると考えられる 光合成と根呼吸の関係の結果では、根呼吸速度は、土壌温度だけでなく、光合成速度のピークや葉の日中低下などの変動に依存することが明らかとなった。このことから根呼吸は、地上部からの炭素供給およびそのタイムラグの影響を受けることが示唆された。地上部と地下部の生理機能を同時に把握することは、今まで環境要因だけでは説明が難しかった根呼吸の変動要因の正確な理解につながると考えられる。 以上の結果より、根呼吸速度は、菌根菌や光合成に大きく依存していることが明らかとなった。次年度では、これらの要因が根の機能だけでなく、寿命にどの程度影響を与えているかを詳細に調べていきたいと考える。
|