研究概要 |
・前立腺癌罹患と関連する単塩基多型の同定(ゲノムワイド関連解析) まず、Biobank Japanに登録された前立腺癌患者1583人、コントロール3386人に関してゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、P<1×10^<-4>となった領域についてさらに別の患者(3001人)、コントロール(5415人)セットでReplication studyを行った。その結果、5つの領域が新規に日本人の前立腺癌罹患に関わる遺伝子領域として同定された。また、これまで欧米から前立腺癌罹患関連領域との既報のあった31領域のうち、19については日本人においても再現がとれるが12については日本人において関連が示されなかった。次に、GWASで新規に同定された5領域について、Fine Mappingを行った。これにより、2p24領域においてはC2orf43,6p21領域においてはFOXP4,6q22領域においてはGPRC6AもしくはRFX6遺伝子が前立腺癌罹患と関連している前能性が示唆された。 前立腺における制遺伝子NKX3.1領域における機能的SNPの同定 NKX3.1は前立腺における癌抑制遺伝子としてよく知られている。また、これまでのGWASの報告で、NKX3.1の14kb下流にあるSNPと前立腺癌罹患の関連が示唆されており、我々の行った日本人におけるGWASにおいでも同様の結果が得られた。そこで、我々は同領域において実際に機能的意義のあるSNPの同定を試みた。まず、NKX3.1の周辺領域において詳細なgenotypingを行った。次に、NKX3.1の上下5kbを含む領域をシークエンス解析し、同領域内の遺伝子多型を全て確認した。その結果、最終的にお互いに完全に連鎖している12個のSNPを機能的SNPの候補として同定した。そこで、RNA stability assay, exonおよびゲルシフトアッセイにより、機能的SNPの候補の絞り込みを行った。その結果、NKX3.1の5'UTRに存在するrs11781886がSp1との結合親和性を変化させることによってNKX3.1プロモーターの転写活性に影響をおよぼし、これによって前立腺癌易罹患と関わっていることが判明した。
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