研究課題/領域番号 |
10J02153
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
恒松 雄太 静岡県立大学, 薬学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 天然物 / 構造活性相関 / 全合成 / ケミカルバイオロジー |
研究概要 |
我々が見出したStreptomyces属放線菌が生産する新規化合物tryptopeptin類は、既存の報告にはない新たな作用機序をもつTGF-βシグナル伝達経路阻害剤であると考えられ、新しい抗がん剤のリード化合物として期待される。本化合物は異常アミノ酸からなるペプチド骨格を有し、そのC末端側にはトリプトファン残基が2炭素増炭し、さらにエポキシケトンが形成されたユニークな化学構造を有する。本研究では、未決定であったtryptopeptin Aおよびtryptopeptin Bを全合成することにより絶対立体構造を解明した。続いて、得られた天然物および、合成誘導体をもとに構造活性相関を精査したところ、本化合物のTGF-βシグナル伝達経路阻害活性にはC末端のエポキシケトンが重要な役割を担うことが示唆された。続いて、本化合物の細胞内標的分子を突き止めるためにケミカルプローブを合成した。作成した蛍光化tryptopeptin Aを哺乳動物細胞へ処理したところ、特定のオルガネラへの蛍光の集積が認められたことから特異な標的分子が存在することが示唆された。一方、本研究では天然からは微量成分としてしか得られなかったtryptopeptin Aの全合成を達成し、効率的に本化合物を供給する方法を見出した。今後、本化合物を用いて更なる構造活性相関と詳細な作用機序解明、および動物実験などによる薬剤としての開発が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的を完全に遂行することは出来なかったが、これに向けての基盤を構築することができた。具体的には化合物を大量供給する系を作成できたので、今後スムーズに研究展開が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
ケミカルバイオロジー手法、またはケミカルジェネティクス手法を利用することでtryptopeptin類の細胞内標的分子を同定する。強い活性を示す化合物については積極的に動物実験へと展開し、本化合物の抗がん剤としての可能性を評価する。
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