研究概要 |
キムネクロナガハムシは、東南アジアで大発生しているココヤシの新芽を加害する侵入害虫である。ベトナムやタイでは、原産地から寄生蜂Asecodes hispinarumを導入し、本種の防除が行われてきた。22年度は、本種の大発生及び分布拡大に及ぼす天敵の影響を明らかにするため、タイで本寄生蜂の寄主利用様式及び繁殖特性について25℃、12L : 12D条件下で調べた。その結果、本寄生蜂は内部寄生性で、1-4齢幼虫及び0-1日齢の蛹に寄生でき、羽化率は、4齢幼虫で最も高かった。発育日数は、全発育段階の寄主で、産卵からマミー化まで約7日、羽化まで約20日と、寄主の発育ステージに左右されなかった。羽化個体数は、幼虫の齢期が進むにつれ増加した。1-4齢幼虫で重さと産卵数の間に相関関係があったが、各齢内では、寄主サイズと産卵数に関係は見られなかった。同じ齢期内では、脱皮直後個体はマミー化直前まで摂食を続け、重さが増加したが、脱皮直前個体では、摂食が抑えられ脱皮が抑制された。 幼虫寄生蜂の寄生様式は、1,若齢幼虫の内部に産卵し、寄生後、寄主を殺さず、ある段階の発育ステージまで寄主を成長させる寄生戦略2,若-老齢期の幼虫の外部に寄主の大きさに応じて産卵し、寄生時に寄主を殺し寄生する寄生戦略に分けられる。本寄生蜂は、1-4齢幼虫及び0-1日齢の若い蛹までの広い発育ステージに寄生可能であった。また、寄生可能な寄主の体サイズは大きく異なるが、雌は寄主幼虫サイズに応じて寄主あたり産卵数を調節していた。寄生後、寄主を生かし脱皮直後個体では摂食を続けさせ、脱皮直前個体は摂食を抑え、脱皮を制御した。本寄生蜂は、短い寿命という限られた時間の中で最終的な寄主サイズに応じた産卵数調節を行い、効率的に寄主を利用する繁殖戦略をもつことを明らかにした。本成果は、2010年に日本昆虫学会及びアメリカ昆虫学会において発表を行った。
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